【介護サービスが必要になったら】介護の豆知識その⑪~介護うつとは?セルフチェックで予防しよう~

はじめに
自宅で家族の介護を続けていると、知らず知らずのうちに心身の負担が蓄積された状態となり、次第に孤独感や不安、心身の疲労が増してきて、最終的には「介護うつ」を発症してしまうことがあります。
介護うつを未然に防ぐには、できるだけ早く察知し、それに対処することが重要です。
本記事では、現在介護をされている方、これから介護を始める方に向けて、介護うつの症状や原因、
対処法などについて解説いたします。
介護うつとは?
「介護うつ」とは、介護者が介護疲れや介護によるストレスからうつ病を発症した状態のことをいい、介護は身体的な負担だけでなく、精神的なストレスも伴うため、うつ状態に陥るリスクがあります。
介護うつになると介護そのものが難しくなるだけでなく、介護者の日常生活にも大きく影響し、
具体的には食欲や睡眠の乱れ、意欲の低下が見られ、介護者の生活の質が大きく損なわれます。
そのような状態にならないために、介護うつの早期発見と予防が非常に重要となります。
介護うつの症状は?
介護うつを早期に発見するためには、症状を理解することが重要です。
介護うつの初期症状として食欲の急激な減少や、夜中に何度も目が覚めるなどの症状が見られます。
そして早期の気付きが適切な対処につながります。
介護うつの症状には、下記のようなものがあります。
このような状態が2週間以上続く場合は、介護うつの可能性が高いと考えられます。
- ・食欲不振
- ・倦怠感
- ・焦燥感
- ・疲労感
- ・睡眠障害
- ・無気力、無表情
- ・気分の落ち込み
これらの症状は本人や周囲の人々が単なる疲れからくるものだと誤解しやすく、気付かないうちに病状が進行してしまいます。
そのため、周囲の人々は介護者の日常的な変化に注意を払い、少しでも気付いた事があれば早期にサポート体制を取るようにすることが大切です。
また、介護による経済的な負担も介護うつの原因となることがあります。
さらに介護うつの前段階として「介護疲れ」という症状も見られます。
介護疲れは前章でも解説させていただきましたが、介護に伴う負担が原因で心身に不調を引き起こす状態のことを指します。
介護うつのセルフチェック
介護うつかもしれない?!と思ったら、以下の項目を参考にセルフチェックをしてみましょう。
物事に対して興味がない、楽しめない- 気分が落ち込む、憂うつな気持ちになる
- 寝つきが悪い、夜中に目がさめる。または逆に昼間の眠気が強い、眠りすぎる
- 気力が出ない
- 食欲がない、または食べ過ぎる
- 集中力や決断力が鈍っている
- 普段よりも疲れやすい
- 自分はダメな人間だと感じる
- 死について考えてしまう
- 落ち着かない気持ちになる
厚生労働省(うつ病チェック)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/02.pdf
介護うつの可能性について、心当たりが5つ以上ある場合は注意が必要です。
気分の落ち込みや晴れない気持ちは誰にでもありますが、うつ病の場合はその状態が2週間以上続くことが特徴です。
介護うつは早期に対処することで改善や予防が可能ですので、日常的にセルフチェックを行い、サインを見逃さないようにしましょう。
ただし、セルフチェックの結果は診断にはならないため、心配な時や心当たりがある時は自己判断をせずに、医療機関などで相談することをおすすめします。
介護うつになりやすい人の特徴とは?
介護による負担やストレスが大きければ大きいほど、心身に与える影響も大きく、介護うつになりやすい傾向にあります。
以下のような傾向がある方は、特に注意が必要です。
・真面目で几帳面、かつ完璧主義
介護に対する完璧主義が自己責任感を強め、きちんとできないと落ち込みやすくなります。
特に真面目で几帳面な方は家族の介護に対して真剣に取り組む傾向があり、自分のことよりも介護を優先することが多くなります。
また、介護を受ける相手が思い通りに行動しない場合、強いストレスを感じることもあります。
・責任感が強い
人に頼ることや甘えることが苦手な方は、自分の家族の介護に関して「自分がやらなければいけない、頑張らなければならない」と強く思ってしまいます。
このような考え方をしてしまうと、疲れや体調不良になっても周囲の心配を受け入れにくく、一人で抱え込んでしまう傾向にあります。
・繊細で精神的に脆い
気が弱く、自分に自信が持てない傾向にある方は、仕事や介護に対する不安や心配が常に付きまとってしまいます。そして周囲の目を気にするあまり、自己評価が低くなってしまうことがあり、一生懸命に介護をしても感謝の言葉が得られなかったり、要介護者の拒否や暴言にさらされるとさらに気分が落ち込んで、孤独感や絶望感が増してしまいます。
また、職場では介護のために休んだり早退することで、上司や同僚に対して負い目を感じてストレスが溜まることもあります。
・体力面での不安要素がある
介護は日常的に体力が必要とされることが多く、介護者にかかる身体的負担は大きなものになります。
常に体調が優れないと自信も持てず、ネガティブな思考に陥ることがあります。
また、仕事をしている場合、過労による介護疲れが体調不良を引き起こし、最終的にはうつ病のリスクを高める可能性があります。
介護うつになってしまった時の3つの対処法
介護うつの治療法は主に「休養」「精神療法」「病院の受診」3つに分類され、これらを組み合わせた治療が行われます。
1.休養
心や体のエネルギーを回復させるためには、しっかりと休むことが治療の基本となります。
介護によるストレスから解放されるためには、まずは介護から一旦離れ、疲れた心と体をリセットすることが必要になります。
介護サービスのショートステイなど、レスパイトケアを利用することで介護者は休息やリフレッシュの時間を確保できます。
また、自分以外の家族に頼ることも必要です。家族に迷惑がかかることを心配するかもしれませんが、長期的に介護を続けるためには、家族の協力と介護者自身が健康でいることが非常に大切です。
2.精神療法
精神療法は、専門医によるカウンセリングを通じて心の問題の原因を探り、解決策を見出すことです。
カウンセリングを受けることで自分の感情を整理し、ストレスを軽減することにつながります。
また、うつ病の治療法の一つに「認知行動療法」があります。
これはうつの原因を探り、物事の考え方や見方を変えることで症状を軽減する方法です。
カウンセラーとの対話を通じて、自分の思考パターンを見直すことができれば、うつ病の再発を防ぐことに繋がるかもしれません。
3.病院を受診する
うつ病の症状を感じた場合やその症状が続くようであれば、心療内科や精神科を受診してみましょう。
医師による診断を受けることで、抗うつ剤などの薬が処方され、気分の落ち込みや不安感を軽減することができます。
薬物療法も日常生活をより快適に過ごすための手助けとなりますので、心の健康を大切にし、必要なサポートを受けることが重要です。
介護うつを予防する5つの対策法
1.一人で抱え込まず相談してみよう
介護を一人で抱え込むことは非常に大きな負担となりますので、周囲の方を信頼し、少しでも任せることが重要です。
そして小さな悩みや不安でも、誰かに話すことで気持ちが軽くなることがあります。
身近な人に相談しにくい場合は、介護者の集まりに参加するのも良い方法です。
もし周りに頼れる人がいない場合は、専門家に相談することも考えましょう。お住まいの役所や地域包括支援センター、介護支援専門員、医療ソーシャルワーカーなどが相談先として適しています。
2.介護についての知識を持つ
介護に関する知識が足りないと、何か困った際などに適切な解決策を見つけることが難しくなります。
介護についての正しい情報や知識は介護の負担を軽減し、介護うつを克服するための重要な手がかりにもなります。新聞や雑誌、インターネット等を通じて、認知症を始めとする高齢者の健康上の問題や介護・福祉に関する最新情報を得て、専門的な知識を広げていくことも大切です。
ただし、インターネット上には誤った情報や偽情報が投稿されている場合もあるため、信頼できる情報源を選ぶことが重要となります。
例えば専門家や介護事業所が監修した記事など、信頼性の高い情報を参考に介護技術や便利なサービス・制度を活用することで、経済面でのサポートを受けることができたり、ストレスや悩みの対処法についても学ぶことにつながります。
3.家族や周囲の協力を得る
在宅での介護は家庭内外での介護者・協力者が多いほど、その負担が軽減されます。
家族や親戚、近隣の方々と協力し、役割を分担することで介護の負担は分散させることができるため、介護者一人ひとりの介護うつのリスクを低下させることが可能となります。
また、周囲とのコミュニケーションを大切にすることで、介護の質は絶対的に向上します。
介護の問題は誰にでも起こり得るため、積極的に連絡を取り合い、助けを求める姿勢を持ちましょう。
4.趣味や楽しみの時間を持つ
介護から一時的にでも離れることで、心身をリフレッシュさせましょう。
趣味や娯楽に打ち込むことで、日常のストレスを軽減し、自分自身を大切にする時間を持つことができます。リラクゼーションやマッサージを受けることも、心の安らぎをもたらします。
また、買い物や美容院に行くなど、外出することだけでも気分転換が図れますし、さらに思い切って旅行に出かけることも、介護のことを一時的に忘れてリフレッシュする良い方法です。
自分をいたわる時間を持つことが、介護を続ける上で大切なポイントです。
5.介護サービスを活用する
在宅での介護を家族だけで行うには限界がある事を理解したうえで、時には介護のプロに力を借りることも必要です。介護保険サービスを利用する際はケアマネジャーに要望を伝え、様々なサービスを上手に活用することで、介護者は休息を取ることができます。
通所系サービスを利用すると、介護を受ける方が外出している間に自分の時間を有効に使うことができるため、積極的に活用することをおすすめします。
また、しっかりと休養を取りたい場合には、数日から数週間のショートステイを利用するのも良い選択肢となり、状況によっては数カ月の入所も可能となっています。
おわりに
「介護うつ」は介護に携わる方であれば誰にでも発症する可能性があり、終わりの見えない不安や肉体的・精神的な疲労、経済的な負担などが原因となります。これらの負担を軽減するためには、全てにおいて完璧を目指さない、ということを意識しましょう。
また、介護は周囲との関わりも大切になります。
一人で抱え込まずに介護サービスなどを上手に利用して、周囲のサポートを受けながら介護生活を送ること、続けていく事が非常に重要です。
そして「介護うつ」が疑わしい場合は重症化を防ぐために、早めにかかりつけ医または専門医を受診して、相談をしてみて下さい。
また、少しでもその兆候が見られる場合には、まずは休息の時間をしっかりと確保し、ご自身の心身をいたわることでストレスの管理を心がけましょう。
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過去の記事をまとめてございます。よろしければご参照ください。
参考リンク
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000154738.pdf
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/02.pdf
みんなの介護
https://www.minnanokaigo.com/news/kaigo-text/home-care/no375