【介護サービスが必要になったら】介護保険の基礎知識②~介護保険の申請方法と注意点~
はじめに
前回のトピックスでは介護保険制度の基本概要とその仕組みについて解説させていただきました。
今回は実際にこの制度を利用し、介護保険サービスを受けるための申請方法やその流れと注意点について解説いたします。
介護サービスを受けるまでの流れ(介護保険の申請方法)
1.申請先は市区町村の窓口
介護保険の利用を検討している場合は、まず市町村区の窓口に届け出ましょう。
介護に関する問題や相談は、地域包括支援センターが最初の窓口です。お住まいの地域にある地域包括支援センターを探すことで、適切な支援を受けることができます。
介護を必要とする本人以外でも、利用者の家族が要介護認定の申請を行うことができます。家族に頼ることが難しい場合には、地域包括支援センターや居宅介護支援事業者、介護保険施設の職員が申請を代行することも可能です。
居宅介護支援事業所とは?
要介護者であっても介護サービスを受けながら在宅で生活を続けたい人の支援を行う施設です。
地域包括支援センターとの違いは、在宅で過ごす高齢者の支援を行う点では同じですが、居宅介護支援事業所が要介護1以上の高齢者のケアプランを担当するのに対して、地域包括支援センターは、地域に住む高齢者の困りごとに幅広く対応しています。
※地域包括支援センターの詳細については「介護の豆知識その①~地域包括支援センターとは?~」をご参照ください。
2.要介護・要支援の認定申請を行う
介護サービスを利用する際は「介護保険証(介護保険被保険者証)」と「介護保険負担割合証」が必要になります。
介護保険証は、65歳以上の人が介護保険の第1号被保険者となる際に市町村から送付されます。
40歳から65歳未満の第2号被保険者は、要介護または要支援の認定を受けた場合にのみ、介護保険証が送付されます。
介護保険負担割合証は、被保険者ごとに異なる負担割合を示すもので、前年の所得に基づいて負担割合が決定されます。この証明書は、要介護または要支援の認定を受けた人や事業対象者に対して、原則として毎年7月に送付されます。
日常生活に介護や支援が必要と感じたら、まず市区町村の窓口にて要介護(要支援)認定の申請を行います。申請の際、第1号被保険者は介護保険被保険者証、第2号被保険者は医療保険の被保険者証の提示が必要です。
3.申請書の提出
要介護申請を行う場合は以下の書類が必要です。
①要支援・要介護認定申請書
役所・役場もしくは地域包括支援センターの窓口に置いてあるほか、
インターネットからもダウンロードできます。
②介護保険被保険者証
第1号被保険者(65歳以上)は必要です
③健康保険被保険者証
第2号被保険者(40~64歳)は必要です
④マイナンバーが確認できるもの(写しでも可)
⑤申請者の身元が確認できるもの
運転免許証、身体障害者手帳、介護支援専門員証など
※本人以外が申請する場合は「委任状」「印鑑」「代理人の身元が確認できるもの」が必要です。
⑥主治医の情報(医療機関名・所在地・電話番号など)が確認できるもの(診察券など)
4.認定調査の実施
役所に申請を行った後、市区町村の担当者から訪問調査の連絡が入ります。
市町村等の調査員が自宅や施設等を訪問して介護サービスの必要度を判断するために、現段階の心身の状態の確認をする認定調査を行います。
※調査内容の詳細は次回記事にて解説いたします。
一次判定では、客観的かつ公平な判断を行うためにコンピュータを用いた判定が実施されます。具体的には、厚生労働省が開発した全国共通の要介護認定ソフトを使用し、申請者が介護にどれだけの時間を要するかを分析した上で、この介護にかかる時間(手間)と認知症加算の合計を基準に、要支援1から要介護5までの介護度を判定します。
これらの介護に必要とされる時間を要介護等認定基準時間とし、要介護認定等基準時間における介護行為は下記の5つに分類されています。
そして要介護度は介護にかかる時間の長さに応じて分類されているので、算出される要介護認定等基準時間が長くなるほど、要介護度は重いと判定されます。
二次判定では、一次判定の結果と主治医意見書の内容をもとに、「介護認定審査会」で要介護・要支援の認定の判定を行います。
二次判定では「介護の手間」を正確に測定することが適正な介護度を算出するために重要となります。介護の手間が多いにもかかわらず介護度が低く評価される場合や、逆に手間が少ないのに高く評価されることがあります。適正な介護度を得るためには、以下の3つのポイントに注意しましょう。
①認定調査のタイミングに注意
介護認定では、調査日や受診日時点の「介護の手間」を評価することが基本です。このため、疾患の状態や環境が短期間で変化すると、適切な認定が難しくなります。特に入院や施設に入所した直後は注意が必要です。
②主治医意見書は詳細に記載してもらう
主治医意見書は、自分の病状を詳しく理解している医師に作成してもらうことが重要です。複数の病院に通院している場合、専門外の医師や対象者の状態を把握していない医師では、必要な情報を得られない可能性があります。そのため、自分の病状をしっかりと把握している主治医に依頼しましょう。また、主治医意見書は認定申請の1〜2週間前に受診して依頼することが望ましいです。
※主治医意見書は主治医がいない場合、市区町村が指定する医師の診察を受けることになります。
③調査や受診のときに「介護の手間」を伝える
介護認定の調査や受診の際には、心身の状態だけでなく、介護にかかる手間についても詳しく伝えることが重要です。要介護度は介護にどれだけの手間がかかるかによって決まるため、具体的な介護内容やその頻度、労力についても説明する必要があります。
5.要介護・要支援の認定
認定調査の結果とかかりつけ医の意見書をもとに、介護認定審査会で要介護・要支援の有無および要介護度・要支援度の決定が行われ、要介護・要支援に認定された場合、市区町村からその旨が通知されます。認定結果の通知は、申請から原則30日以内に届きます。
認定は要支援1・2から要介護1~5までの7段階及び自立(非該当)に分かれており、要介護度に応じて利用できるサービスや介護保険で認められる月の利用限度額などが異なります。
※要介護認定の介護レベル(要介護度)の詳細については次回解説いたします。
6.ケアプランの作成・サービスの利用開始
ケアマネジャーに相談しながら作成したケアプランの内容に沿って、介護保険サービスの利用が始まります。
市区町村から要介護・要支援認定を受けたら、介護サービス事業者にケアプランの作成を依頼します。相談先は、要支援1・2の人は地域包括支援センター、要介護1~5の人はケアマネジャーのいる居宅介護支援事業者(都道府県知事の指定を受けた機関で、介護支援専門員(ケアマネジャー)が常駐する事業所)です。
作成したケアプランに基づいた介護サービスを利用した場合、介護保険制度が適用され、被保険者の窓口での負担は1割~2割になります。
①「要支援1~2」の認定を受けた場合
介護予防サービスを利用することができます。利用するには、地域包括支援センターに連絡し、職員と相談しながらケアプランを作成します。ケアプラン作成時には、今後の生活の希望や利用したい介護予防サービスについて職員にしっかりと伝えましょう。
②「要介護1以上」の認定を受けた場合
要介護1以上の認定を受けると、自宅で利用するサービスと施設に入居して利用するサービスの2つを受けることができます。サービスの利用方法は異なるため、注意が必要です。
自宅で介護サービスを受ける場合、まずはケアマネジャーを選び、ケアプランを作成します。希望するサービスがあれば、ケアマネジャーにしっかり伝えることが重要です。
ケアプランが完成したら、介護事業所と契約を結びます。この契約は必ず利用者本人が行う必要があり、家族が無断で契約することはできません。ただし、認知症などで判断能力がない場合は、代理人を立てることが可能です。
※ケアマネジャー(介護支援専門員)についての詳しい解説は「介護の豆知識その②~ケアマネジャーとは?~」をご参照ください。
介護保険の申請に関する注意点
要介護認定の結果には以下のように有効期間があります。
・新規の申請:6カ月(市町村が必要と認める場合は、3カ月~12カ月の間で月単位で市町村が定める期間)
・要介護認定の更新:12カ月(市町村が必要と認める場合は3カ月~48カ月の間で月単位で市町村が定める期間)
心身の状態が一定期間安定している場合、有効期限は4年間(48カ月)です。要介護認定は自動更新されないため、有効期限が過ぎると認定の効力が失われますので、期限管理には注意が必要です。
要介護認定の更新手続き
要介護認定の更新手続きは、市役所や地域包括支援センターで行うことができます。更新手続きの案内は、有効期限満了の1〜2カ月前に通知されるため、案内が届いたら速やかに申請を行いましょう。
申請後、認定審査員が訪問調査を行い、心身の状況を確認します。この際、本人や家族で訪問の予定をしっかり立てておくことが大切です。また、主治医意見書の作成もかかりつけ医に依頼する必要があります。
調査票と意見書が揃った後、介護認定審査会で審査が行われ、介護度と認定有効期間が決定します。申請から決定までの期間は原則30日以内ですが、書類の到着状況によっては延期されることもあります。
おわりに
今回は介護保険の申請方法と注意点について解説させていただきました。
介護サービスを利用するあたっては、いくつかの手順を踏む必要があり、書類の用意や行政による審査など、しばしの時間を要するものです。いつでもすぐに、というわけにはいきませんので、事前準備としてサービスを受けるまでの申請方法や流れを把握しておくことは大事ですね。
次回は要介護認定や介護レベル(要介護度)について解説させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
参考リンク
厚生労働省
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/flow.html
一般社団法人 公的保険アドバイザー協会