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【介護サービスが必要になったら】介護保険の基礎知識⑤~介護サービス利用時の自己負担(利用料)について~

はじめに

介護サービスを利用する際、自己負担割合(利用料)がどのぐらいになるか知りたい方もいらっしゃるのではないでしょうか。

公的介護保険があるとしても、全ての費用がカバーされるわけではありません。

65歳以上の方が介護サービスを利用する場合の自己負担割合は、所得などの条件に応じて料金の1割~3割のいずれかと定められており、例えば自己負担割合が1割の方の場合、介護サービスの利用料金が1万円だった際に1,000円を自己負担で支払うこととなります。

本記事では介護サービスを利用する際の自己負担割合や支給限度額の基準、サービスの種類ごとの自己負担額の目安、軽減制度などについて解説いたします。

公的介護保険の自己負担

公的介護保険制度では、介護レベルに応じて保険給付の対象となるサービスが決まっています。

また、要支援・要介護度ごとに介護保険サービスの月の上限を単位数として設定された区分支給限度基準額が決められており、実際の自己負担額は利用者の所得に基づいて1~3割となっています。区分支給限度基準額を超えるサービスを利用する場合は、全額自己負担が必要です。

介護における単位とは、介護保険制度で定められた介護サービスに対する報酬を指し、点数として算出されます。単位の計算方法は、地域とサービスによって決定される単位数に1単位ごとの単価(基本は1単位=10円)を掛け合わせます。1単位の単価は、地域区分の上乗せ割合やサービス別の人件費割合によって加算され、物価が高い大都市ほど高く設定されている傾向にあります。

介護保険の負担割合は、合計所得金額と65歳以上の人の世帯人数によって決まります。合計所得には、年金収入(遺族年金と障害者年金を除く)とそれ以外の所得が含まれます。

また、介護保険の負担割合は「介護保険負担割合証」に記載されています。

★65歳以上の方は、本人の合計所得金額が

160万円未満の場合は1割負担

160万円以上220万円未満の場合は2割負担

220万円以上の場合は3割負担

また夫婦の場合は「年金収入+それ以外の所得額」の合計が年間346万円以上で2割、

463万円以上で3割負担です。

★40歳から64歳までの方、住民税が非課税の方は、

所得に関わらず1割負担

自己負担割合が決まる時期

要介護認定が行われる際に、要介護や要支援の判定とともに自己負担割合も決定されます。

介護保険の要介護認定を申請すると、1カ月程度で要介護度が決定し「介護保険被保険者証」と一緒に負担割合が記されている「介護保険負担割合証」が郵送されます。

「介護保険負担割合証」は毎年7月下旬に各市町村から自動的に郵送されます。この負担割合証は介護保険サービスを利用する際に必ず必要となりますので、介護保険被保険者証と一緒に提示しましょう。また、被保険者証と負担割合証の内容が変更になった時は、担当のケアマネージャーや介護事業者に必ず提示しましょう。

居宅サービスにかかる利用料

居宅サービスとは自宅に住みながら介護を受けることができるサービスのことです。

1カ月あたりの居宅サービスの支給限度額と介護サービス利用の目安は以下のとおりです。

要支援

要介護

<注意事項>

訪問介護を利用した場合の自己負担の例(自己負担分1割)

訪問介護は利用する方の自宅に介護福祉士や訪問介護員が訪れて介護を行うサービスで、訪問介護の対象者は要介護認定を受けている方になります。

訪問入浴介護1回当たりの自己負担額の目安(1割負担の場合)

訪問入浴介護とは、浴槽と湯沸かし器を積んだ入浴専用車両が訪問し、看護師や介護職員が同行して要介護者の入浴を手伝います。

訪問入浴介護の対象者は要介護1~5の認定を受けている方です。ただし、要支援1~2の方は自宅に浴室がない場合や感染症などで施設の浴室利用ができないなどの特別な事情がある場合のみ、介護保険による介護予防訪問入浴介護が利用できます。

訪問リハビリテーションの自己負担額の目安(1割負担の場合)

訪問リハビリテーションは医師の指示に基づいて、理学療法士や作業療法士が利用者の自宅を訪問し、リハビリテーションを提供するサービスです。

訪問リハビリテーションの対象者は、医師からリハビリが必要と認められた要介護1~5の認定を受けた方です。また、要支援1・2の認定を受けた人は、介護予防訪問リハビリテーションを利用することができます。

デイサービス・デイケアを利用した場合の自己負担の例(1割負担の場合)

<デイサービスとデイケアの違いついて>

デイサービスは要介護者が施設でリハビリや交流、レクリエーションを楽しむなど日常生活の介護を目的としており、医師の配置義務はありません。

一方、デイケアは医療機関や介護老人保健施設で要介護者を対象としたサービスで、身体機能の回復・維持、認知機能の向上などの医療的ケアを目的としています。

通常規模型のデイサービス(平均利用者数が301~750人以内)を利用した場合の自己負担の例

※利用料は地域によって異なります

通常規模の事業所のデイケアを利用した場合の自己負担の例

※利用料は地域によって異なります

施設サービス利用時の自己負担(自己負担分1割)

施設サービスとは、高齢者が入居する施設で提供される介護サービスを指します。

介護保険施設である特別養護老人ホーム(特養)・介護老人保健施設(老健)や、サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホーム、グループホームなどの高齢者向けの住まい・施設で利用できます。

特別養護老人ホーム(特養)を利用した場合の自己負担の例

特別養護老人ホームは介護保険サービスにおける「施設サービス」に分類され、原則として要介護3以上の認定を受けた方を対象とする介護施設です。

入浴時の介助や機能訓練、療養上のサポートを受けることができ、利用者が負担する施設サービス費は使用する部屋のタイプなどにより違いがあるため、入居の際は事前に確認しましょう。

※従来型→4人部屋の多床室が主流。部屋をカーテンやパーテーションで仕切って入居する形態で共用部分が多い。

※ユニット型→全個室の入居形態で、プライバシーを重視しながらも共用部分での交流も楽しめる。

グループホームを利用した場合の自己負担の例

グループホームは、要支援2または要介護1以上の認知症の方を対象としたケア施設です。

この施設では生活支援や機能訓練などのサービスをスタッフから受けることができます。最大9人のユニットで共同生活を行い、原則として1つのグループホームに2ユニットまで設けられています。

グループホームにおけるユニットとは、複数の居室(個室)と居間、台所などで構成される生活空間のことを指します。 1つのユニットは5~9人で構成され、多くのグループホームが2つのユニット・定員18人程度の小規模体制で運営しています(厚生労働省によると、ユニット数は1つの施設に対して最大3つと定められています)。

そのほかのサービス利用料については厚生労働省のHPをご覧ください→こちらから

高額介護サービス費

自己負担額が高額になった場合の軽減措置として「高額介護サービス費」、「高額医療・高額介護合算制度」があります。

高額医療と高額介護合算制度

医療保険と介護保険の自己負担額が高額になる場合、負担を軽減する制度があります。

この制度では世帯ごとに自己負担額を集計し、一定の限度額を超えた場合に申請を通じて払い戻しが受けられます。申請は各医療保険において、世帯内の自己負担合算額が所得区分ごとに設定された限度額を超えた世帯が対象です。支給対象となる場合、自治体によっては通知が届くことがあります。

医療費控除

1年間にかかる医療費の自己負担額が10万円を超えた場合、確定申告をすることによって医療費控除を受けると、課税所得額から最高200万円まで控除され、納税額の一部が還付されます。

医療費控除には、訪問看護や訪問リハビリテーションなど、一部の介護サービス費での自己負担分も対象となります。総所得金額等が200万円未満の方は総所得金額等の5%を超えた場合に対象となります。

介護サービス利用料は地域によって違う?

介護保険サービスの費用は地域によって若干変わってきます。

この違いは「地域区分」と呼ばれ、介護報酬の地域格差を解消するために設けられています。地域区分は各地域の特性を考慮し、介護報酬の平均を算出することで、地域ごとの実情に応じた料金設定を行っています。地域区分については「介護保険の基礎知識⑦~介護保険サービスの地域区分と介護報酬について~」にて詳しく説明いたします。

公的介護保険料は控除できる?

公的介護保険料は社会保険料控除の対象となり、年末調整や確定申告を通じて所得控除が可能です。

さらに、公的介護保険とは別に民間の介護保険に加入している場合、その保険料は生命保険料控除の対象となります。

自己負担額の軽減はどこで相談できる?

介護サービスにかかる自己負担額の軽減についての悩みは、自治体の窓口やケアマネージャーに相談することができます。

自治体の窓口では、利用を検討している介護サービスが負担限度額認定の対象かどうかを確認することも可能です。

おわりに

今回は介護サービスを利用する際の自己負担額について解説いたしました。

お住まいの地域ごとに負担額は異なりますが、大体の利用料金について知っていただけましたら幸いです。

介護が必要になる可能性は、誰にでも起こり得ます。将来に備えて、安心して暮らすためには早めの準備が大切です。民間の介護保険なども上手に活用し、将来の介護費用への備えを進めましょう。

参考リンク

厚生労働省

https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html