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【介護サービスが必要になったら】介護保険の基礎知識⑦~介護保険サービスの地域区分と介護報酬について~

はじめに

こちらのニュースルームトピックス「介護保険の基礎知識⑤~介護サービス利用時の自己負担(利用料)について~」でも触れましたが、介護保険サービスの自己負担額は地域によって異なります。

基本的には1割負担(所得によっては2割または3割負担)ですが、同じ1割負担でも地域ごとの金額に違いが生じるのはなぜでしょうか。

本記事では、地域ごとの自己負担額の計算方法や介護報酬の仕組みについて解説いたします。

→前回の記事はこちらからどうぞ

地域区分とは?

地域区分は介護事業所の所在する地域などから、平均的な費用の額を考えて設けた区分です。

この区分の主な目的は、地域による介護報酬の差を解消することです。

都会と地方では職員の賃金に違いがありますが、介護報酬を同等にすると、職員の賃金の高い都会では介護サービスの数は増えず、利益は上がりません。

各市区町村に適用される地域区分は公務員の地域手当を基にしており、公平性と客観性を重視しています。これに加えて、隣接地域とのバランスも考慮されています。

物価や人件費は年々変動するため、地域区分は介護報酬改定の際に見直されます。2024年度の介護報酬改定でも、市区町村の地域区分が更新されました。詳細につきましては、最新の情報を確認することをお勧めします。

参考:令和6年度介護報酬改定における改定事項について

また、介護保険のサービスには各サービスごとに単位が設けられており、利用する際の費用は、この単位に地域区分で定められた金額を掛けて算出されます。日本では、地域区分は1級地から7級地までの7つに分類されており、さらに「そのほか」の区分を加えると、実質的に8種類の区分が存在します。

全国の地域区分と具体的な割合については厚生労働省の公式サイトよりご覧ください→こちらから

介護サービス別の地域単価表

サービスの種類によって人件費の割合は異なります。

現在は70%、55%、45%の3種類が設定されており、具体的には、訪問介護や訪問看護は70%、訪問リハビリテーションや通所リハビリテーションは55%、通所介護や認知症対応型共同生活介護は45%と分類されています。

地域区分に関しては特定の条件を満たす場合に、隣接する地域の区分に基づいて引き上げや引き下げが認められています。

これには当該地域が高いまたは低い地域に囲まれている場合や、複数の隣接地域がある場合が含まれます。また、5級地以上の級地差がある地域と隣接している場合も、4級地差になるまでの範囲で引上げ又は引下げを認めています。

出典:厚生労働省

例<要介護1の該当者が3級地で30日間の介護サービスを受けた場合の自己負担額>

被介護者:要介護1

施設種別:介護付き有料老人ホーム(特定施設)

16,080(単位)× 10.68円(地域加算)× 10%(1割自己負担) 17,173円

介護報酬とは?

介護報酬とは、事業者が利用者(要支援者や要介護者) に介護サービスを提供した場合に、その対価として事業者に対して支払われる報酬のことをいいます。

この報酬は、提供される介護サービスの種類や内容、要介護度、事業所や施設の所在地などを考慮して決定されます。介護報酬の設定には平均的な費用が反映されており、サービスの質や地域の特性に応じた適切な評価が行われています。

介護報酬支払の流れ

出典:厚生労働省

特別地域加算とは?

特別地域は人口密度が希薄であることや交通が不便であることを理由に選定され、奄美群島・小笠原諸島などの離島や、北海道などの豪雪地帯が挙げられます。

国が定めた特別地域で特定の介護サービスを行う場合、介護サービスに対して特別地域加算が適用され、介護報酬単位に15%の加算が行われます。

また、上記の特別地域以外にも、中山間地域での介護利用には小規模事業所加算という10%の地域加算があります。 特別地域加算・中山間地域の小規模事業所加算の対象になる介護サービスには訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、福祉用具貸与、居宅介護支援が含まれます。

さらに、中山間地域の訪問リハビリテーションや通所介護、通所リハビリテーションにはサービス提供体制強化加算があり、こちらは5%の地域加算が行われます。これらの加算は支給限度額に含まれないため、該当する地域では注意が必要です

介護報酬の計算方法

介護報酬の計算方法は地域差などの複数の要素に基づいて、「単位」というものを元に

「介護サービスの単位数 × 1単位あたりの単価」で計算されます。

単位と単価

単位は介護サービスを提供する事業者に対する介護報酬を支払う際の基準のようなものです。

一般的に、1単位は10円に換算されます。

したがって、100単位の場合は1,000円となります。

そもそもなぜ「円」で上限を設定しないかというと、介護サービスによってかかる人件費等が異なることや地域間の人件費の差を考慮しているからです。

介護報酬の計算は「単位」と「単価」が基本的な要素となります。

「単位」はサービスの量や時間を示し、「単価」はその単位あたりに設定された金額です。

例えば、特定のサービスで「1単位」が「10円」と設定されている場合、この金額がそのサービスの「単価」となります。最終的な介護報酬は、サービス提供中に積算された「単位」に「単価」を掛け算することで算出されます。

出典:厚生労働省

お住まいの地域や利用するサービスによって、実際に支払う金額は変わってくることになります。

例えば、東京23区などの都市部で訪問介護を利用する場合は、1単位あたり11.40円の料金が設定されています。

地域ごとの報酬単価の出し方

介護報酬に関する規定では、事業者が得た報酬の中で人件費に充てる割合が定められています。

具体的には、訪問介護や訪問看護では人件費割合が70%、訪問リハビリや小規模多機能型居宅介護では55%、短期入所生活介護や各種施設サービス、特定施設入居者生活介護では45%となっています。

この人件費割合に地域ごとの割増率をかけて、さらにそこに10円をかけたものが、1単位当たりの「報酬単価」となります。

例<名古屋市民が訪問リハビリテーションサービスを利用した場合>

サービスの割合は55%

名古屋市は3級地のため、地域割合は15%です。

55%×15%=0.0825(8.25%)

これが「報酬単価」です。

ただしこの際に、小数点以下は四捨五入します。

よって、8.25%→8.3%(0.083)となります。

1単位=10点ですので、この「報酬単価」もそれに合わせて調整します。

地域別単価の計算方法

報酬単価 0.083×10(円)=0.83(円)

ここに、1単位の基本単価10円を加えた金額が1単位の単価となります。

10(円)+0.83(円)=10.83(円)

よって、10.83円が1単位あたりの報酬です。

介護報酬の計算方法

例<訪問リハビリテーションの点数が200点の場合>

200(単位)×10.83(円)=2,166(円)

よって、2,166円が介護報酬となります。

小数点以下の端数は「切り捨て」で処理する点に注意してください。

おわりに

今回は少し難しい内容になりましたが、地域区分を設定する目的として、地域による介護報酬の格差をなくすためであることが分かりました。

介護報酬の改定は3年ごとに行われていますが、2024年度の介護報酬改定では客観性や公平性の観点から介護報酬の地域格差をより小さくするために、地域区分の設定方法に変更が加えられています。

介護報酬のシステムを理解するために、この記事が少しでも参考になれば幸いです。

トピックス【介護サービスが必要になったら】記事のご案内

過去の記事をまとめております。よろしければご参照ください。

介護保険の基礎知識①~

参考リンク

厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000566688.pdf

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/10/dl/s1005-4f.pdf