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【介護サービスが必要になったら】介護保険の基礎知識⑥~介護保険を利用した住宅改修について~

はじめに

病気や高齢化に伴い、一緒に住んでいる家族やご本人に介護が必要になると、自宅をバリアフリーにしたり、手すりをつけたりと、住みやすい環境を整えることが必要になってきます。

そのためには住宅の改修が必要となってきますが、改修の内容や場所によっては、かなりの費用がかかってくる場合もあります。

そのようなコストを削減するために、介護保険を活用することで、バリアフリー化などの住宅改修にかかった費用を補助してもらうことが可能です。

本記事では介護保険の住宅改修とその流れについて解説いたします。

介護保険の住宅改修とは?

住宅改修とは、簡単にいえばリフォームによって自宅設備を改善したり、新たな設備などを導入することを指し、この住宅改修には介護保険制度を利用することができます。

具体的には、介護保険を利用して段差の解消をしたり、手すりを設置するなど、対象者の生活の質を向上させるための改修が可能です。

介護保険を利用するためには特定の条件を満たす必要があるため、事前に条件を確認しておくことが大切です。

介護保険による住宅改修の対象者

住宅改修に介護保険を利用する際の対象者は要支援や要介護の認定を受けている方で、自宅に住んでいることが条件です。

要支援は1~2、要介護は1~5の認定が必要で、介護施設に入居している場合は対象外となります。ただし、退居日が明確で、改修後に自宅に住む予定がある場合は例外として介護保険が利用できることもあります。

介護や支援が必要な人の住まいの改修には介護保険が利用できるため、役所の介護相談窓口や地域包括支援センターに相談しましょう。

介護保険による住宅改修の支給限度額

介護保険による支給額は最大20万円で、実際の改修工事費用の1割は自己負担となります。

例えば、住宅改修工事の費用が20万円の場合、自己負担は2万円で、介護保険からは18万円が支給されます。

自己負担額は利用者の所得によって異なり、2割または3割の負担が求められることもあります。

2割負担の場合、介護保険からの支給額は16万円、3割負担の場合は14万円となります。

住宅改修を利用できる回数

介護保険を利用した住宅改修は、基本的に1人1回のみの利用が原則です。

支給額の上限は20万円で、複数回の利用はできません。

ただし、同じ人が限度額の20万円を超えない範囲であるなら、複数回の申請をすることが可能です。例えば、最初に5万円を使った場合、次回は15万円の工事を行うことができます。

また、要介護認定を受けた家族が複数いる場合、同じ住宅内でそれぞれが1回ずつ介護保険による補助を利用することができます。

例えば父が1回利用した後、母が要介護認定を受けた場合、母も別に1回利用することが可能です。

その住宅で1回ではなく、そこに住む個人で1回という回数の決まりです。

支給額がリセットされるケース

住宅改修における介護保険の支給額は、要支援度や要介護度が3段階上がる場合や転居する場合にリセットされることがあります。

具体的には、要支援1の人が要介護3に、または要支援2や要介護1の人が要介護4以上になると、再度20万円を限度として住宅改修の利用が可能です。

さらに、別の家に転居する際も、新しい住宅でバリアフリー化が必要と認められれば、再度住宅改修補助の利用ができる場合があります。ただし、新築への引越しでは、住宅改修の必要がないと判断される場合もあります。

介護保険を利用した住宅改修の流れ

住宅改修を行う際には、まずケアマネージャーに相談します。

ケアマネジャーに相談後は、住宅改修事業者と「住宅改修プラン(住宅改修が必要な理由書)」を作成します。

プラン作成時の打ち合わせでは、被介護者の状態に基づいて必要な設備を明確にすることが重要です。この段階で、福祉用具の組み合わせや介護保険の利用、バリアフリー化の目指し方を事業者に伝えることで、適切な住宅改修プランを作成してもらうことができます。

介護保険制度を利用するには役所への申請が必要で、必要書類を用意しておかなければなりません。

工事の前と後、それぞれに書類が必要となります。

工事前に必要な書類

①住宅改修費支給申請書

②住宅改修が必要な理由書

③工事費見積もり書

④住宅改修後の完成予定の状態がわかる資料

①の住宅改修費の支給申請書は役所で取得できます。

また②の理由書は、ケアマネジャー、地域包括支援センター担当職員など限られた人が作成します。

③の工事費の見積もり書は改修事業者が作成したものを使用しましょう。

④の完成予定の状態がわかるものについては、写真や簡単な図を用いて改修前後のイメージが伝わるように、改修事業者に相談して書類を整えてもらいましょう。

住宅改修の支給申請書類を提出したら審査結果の通知を待ち、役所からの審査結果を受けてから改修工事を実施します。もし完成の希望時期がある場合は、その時期を逆算して早めに行動を起こすことが重要です。

工事を先に行い、後から申請することができる場合がありますが、これはやむを得ない事情がある場合に限られます。特別な事情がない場合は改修後の申請は受け付けられず、介護保険が利用できない可能性があるため、注意が必要です。

工事後に必要な書類

①住宅改修にかかった費用の領収書

②工事費用の内訳がわかる書類

③住宅改修の完成後の状態を確認できる資料

①の領収書は住宅改修事業者から受け取ったものを使用します。

②の工事費用の内訳がわかる書類は、見積もり書などが該当するため、こちらも捨てずに保管しておきましょう。

また、③の工事の完成後の状態を確認するためには、工事の図面や実際の工事場所を撮影した写真(撮影日が明記されているもの)も役立ちます。

さらに、利用者以外の住宅を改修する際には、所有者の承諾書が必要です。

例えば、子どもが所有する家に介護が必要な親が同居している場合、その住宅の改修工事を行うためには、所有者(この場合は子ども)の承諾書が必要となります。

工事が完了した後は、領収書や工事費内訳書などの書類を再度役所に提出することで、住宅改修費の補助を受給することができます。

住宅改修費用の支払い方法

介護保険を利用した住宅改修費用の支払い方法には、主に2つの方法があります。

償還(しょうかん)払い

償還払いは工事費を事業者に全額支払った後、介護保険からの支給を受ける方法です。

この方法では工事開始時に全額を自己負担する必要がありますが、後から介護保険からの支給分のお金が戻ってきます。多くの人がこの支払い方法を利用しています。

受領委任払い

受領委任払いとは、利用者が介護保険の自己負担額だけを支払い、残りは自治体から事業者に支払われる方法です。

この制度を利用するには「受領委任払い取扱事業者」に住宅改修を依頼する必要があります。

全ての業者が対応しているわけではないため、業者選びには注意が必要です。

おもな住宅改修の種類

・手すりの取付け

・段差の解消

・滑り防止や移動の円滑化などを目的とした床、または通路面の材料変更

・引き戸などへの扉交換

・洋式便器などへの便器交換

・上記の住宅改修に付随して必要なその他の住宅改修

これら以外の住宅改修は利用者の条件を満たしていても、介護保険の対象とならないことがあるため、注意しなければなりません。

おわりに

介護保険を利用すれば、手すりの設置や段差の解消といった住宅改修が少ない経済負担で行うことができ、本人はもちろんご家族にとっても、より快適で安全な生活環境を整えることが可能となります。

住宅改修についてもっと知りたい方は、今後「介護リフォーム」の記事にて詳細をお伝えさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

参考リンク

厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/general/seido/toukatsu/suishin/dl/07.pdf

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001016043.pdf