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【介護サービスが必要になったら】介護保険の基礎知識⑨~介護保険負担限度額認定証と申請方法について~

はじめに

ご家族やご本人に介護が必要な状態になってくると、様々な場面で費用がかかり、「少しでも経済的負担を減らしたい」とお考えの方も多いのではないでしょうか。

そのような時、介護保険負担限度額認定証を取得することで、介護施設利用時の居住費や食費の負担を軽くすることができます。


負担限度額認定制度は所得に応じて負担を軽減する仕組みとなっており、利用するためには特定の要件を満たす必要があり、また、申請にあたっての準備も必要です。

本記事では、負担限度額認定制度の利用対象者の要件や申請方法などについて解説いたします。

→前回の記事はこちらからどうぞ

介護保険負担限度額認定制度とは?

介護保険負担限度額認定制度とは、介護保険施設を利用した際にかかる費用(住居費・食費)を軽減する制度のことです。

一般的な介護保険サービスは1~3割負担ですが、介護保険施設やショートステイの利用時、介護保険施設に入居した際にかかる費用のうち「住居費・食費」は全額自己負担となります。

しかし、この介護保険負担限度額認定制度を利用すれば全額自己負担額のところ、要件を満たす方は上限額が設定され、一定額を軽減することができます。

ただし、適用範囲や軽減額は自治体によって異なるため、事前に確認することをお勧めします。

介護保険負担限度額認定証とは?

介護保険負担限度額認定証とは、負担限度額認定制度の対象者に交付される書類(証明証)のことです。

介護保険負担限度額認定証は全ての人が対象となり交付されるわけではなく、対象となるには所得と預貯金等の要件があり、その基準は世帯構成などによって異なります。

介護保険負担限度額認定制度の対象となる施設・サービス

負担軽減の対象施設は以下の施設です。

<施設サービス>

特養(特別養護老人ホーム)

老健(介護老人保健施設)

介護医療院(介護療養型医療施設)

<ショートステイ>

短期入所療養介護

短期入所生活介護

<その他>

地域密着型介護老人福祉施設(地域密着型特養)

※民間介護施設であるサービス付き高齢者向け住宅・グループホーム・有料老人ホームなどは負担軽減の対象外です。

介護保険負担限度額認定証の交付条件

介護保険負担限度額認定証を取得するための主な条件としては「所得」と「預貯金」の2つが挙げられます。

所得の条件として、認定を受ける本人とその世帯全員が住民税非課税であることです。

対象者の所得と資産によって以下の4つの利用者負担段階に分類され、下記のいずれにも該当しない人(市町村民税世帯課税者)「第4段階」と呼ばれます。

預貯金等には金融機関に預けている貯金だけでなく、

  • ・株式や債券などの有価証券
  • ・金、銀などの貴金属投資信託
  • ・現金(いわゆるタンス預金)

なども含まれます。借入金や住宅ローンなどの負債がある場合、預貯金等の合計から差し引かれます。また、生命保険や自動車、貴金属(腕時計・宝石等時価評価額の把握が困難であるもの)などは預貯金の対象ではありません。

また、段階によって、下記の例のように居住費や食費の負担限度額が異なります。

※()内の金額は特別養護老人ホームに入所または短期入所生活介護を利用した場合の額です

特例軽減措置

介護保険負担限度額認定証の第4段階(市町村民税世帯課税者)の利用者は、居住費と食費が減額される対象ではありません。

しかし、第4段階の場合でも、特定の条件を満たすことで特例軽減措置が適用されることがあります。


特例軽減措置の対象となるのは高齢者夫婦の世帯など、世帯の1人が施設に入所したことによって経済状況が悪化した場合や、同居している家族の年収が低く、経済的に困難な状況にある場合です。

特例軽減措置を受けるためには申請が必要で、サービス利用時には利用施設に認定証を提示する必要があります。

認定要件

特例軽減措置の対象者になる要件は以下の6つです。

1.世帯人数が2人以上。配偶者が同一世帯でない場合には、世帯員の数に1人を加えること

2.介護保険施設に入所または入院し、利用者負担第4段階の食費、居住費の負担していること

3.世帯全体の年間収入から、利用者が負担する施設での自己負担額を引いた額が80万円以下

4.世帯の現金、預貯金等(有価証券、債券も含む)の額が450万円以下であること

5.日常生活のために必要な資産以外に利用し得る資産を所有していないこと

6.介護保険料を滞納していないこと

世帯分離をしている場合

世帯分離をしている夫婦でも、配偶者の所得は合算されます。

これは、婚姻届を提出していない事実婚の場合でも同様です。介護保険負担限度額認定を受けるためには、本人と配偶者を含む世帯が住民税非課税世帯である必要があります。

ただし、DV防止法に基づき、配偶者から暴力を受けている場合や行方不明の場合は、この条件から除外されます。

世帯分離をしていても、所得が分けられないという点は特に重要です。

介護保険負担限度額認定証の申請方法

介護保険負担限度額認定証の交付条件に当てはまった方は、下記の申請手続きを行いましょう。

認定証の申請先

申請先は、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口です。

提出書類を持参するか、郵送で申請しましょう。

申請に必要な書類

  • ①介護保険負担限度額認定申請書
  • ②同意書(金融機関等に預貯金等の報告を求めることに同意する書類)
  • ③預貯金等を証明するための書類

①介護保険負担限度額認定申請書と②同意書は、自治体の窓口またはホームページから入手できます。

申請に必要な預貯金等を証明する書類③としては、通帳や口座残高の写し、借用証書などが必要です。

申請書類は地域によって異なることがあるため、事前にお住まいの自治体やケアマネジャーに相談しましょう。

生活保護の受給者は預貯金等の証明書を用意する必要がないため、一般の方よりも比較的スムーズに負担限度額認定証を申請できます。

不正申告はNG

不正申告によって介護保険の負担軽減を受けた場合、加算金の支払いを命じられます。

この加算金は負担限度額の2倍に相当し、不正申告を行うと、最終的には負担限度額の3倍の費用を支払うことになります。

また、不正に得た費用は返還しなければならないため、申告内容には十分な注意が必要です。

ショートステイ利用時の注意点

ショートステイを利用している場合の申請書類については、介護保険施設の所在地や名称を記入する必要はなく、被保険者本人の名前を記載・押印して提出します。

申請後、利用負担段階が第1・第2・第3に該当する場合は介護保険負担限度額認定証が交付されます。

ただし、事前に施設にこの認定証を提示しないと減額が適用されないため、注意が必要です。

認定証の交付

初回時は申請してから1週間程度で認定証が自宅に郵送され、第4段階と認定された場合は通知のみで、認定証は交付されません。

介護保険負担限度額認定証の期間は8月1日から翌年7月31日までの1年間です。

更新時はその年の8月1日時点での世帯状況に基づいて負担限度額認定を判定します。そのため、更新時は8月中旬頃に手元に届きます。

おわりに

介護保険負担限度額認定制度は、あまり周知されていないかもしれませんが、利用者の負担を軽減するためには非常に便利な制度で、対象となれば介護保険施設やショートステイでの食費や宿泊費の自己負担が軽減することができます。

認定証の申請にはいくつかの要件を満たす必要がありますが、それをクリアすれば負担限度額が決定されます。特に住民税非課税世帯の方にとっては、介護保険施設やショートステイの利用がしやすくなるという大きなメリットとなりますので、条件や詳細を確認したうえで申請手続きを行いましょう。

最後になりましたが、本年も弊社サイトをご利用いただき誠にありがとうございました。

本年のご愛顧に心より感謝いたしますと共に、来年もより有用なサイトの作成と改善に向けて尽力して参りますので、変わらぬご厚誼を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

トピックス【介護サービスが必要になったら】記事のご案内

過去の記事をまとめております。よろしければご参照ください。

介護保険の基礎知識①~

参考リンク

厚生労働省

https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html