【介護サービスが必要になったら】介護の基礎知識(6)~有料老人ホームとは?①種類や費用について~
はじめに
介護施設を探す際、老人ホームには様々な種類があるため、詳細が分からず迷う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
数ある介護施設の中でも、特に多くの高齢者が入居する施設が有料老人ホームとなっています。
本記事ではこの有料老人ホームの概要や他の介護施設との違い、選び方などについて解説いたします。
有料老人ホームの種類
有料老人ホームは高齢者が安心して生活できる生活環境と、利用者の状態に応じた必要な介護サービスを提供する施設です。
利用者のニーズやライフスタイルに応じて、介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、
健康型有料老人ホームの3つのタイプから選ぶことができます。
3種類の違いを以下の表にまとめてみました。
老人ホームには民間運営の有料老人ホームと公的施設(介護保険施設)の2種類があります。
公的施設には特別養護老人ホームや介護老人保健施設などがあり、国や自治体、社会福祉法人によって運営されているため、入居費用が比較的安価ですが、入居まで時間がかかることもあります。
一方、民間運営の施設は企業や医療法人が運営する多様な介護サービスを提供する施設で、今回こちらで紹介する有料老人ホームは民間施設に該当します。
※介護保険施設については「介護の基礎知識(3)~介護保険施設とは?~」をご参照ください。
ではそれぞれの施設について詳しく見ていきましょう。
1.介護付き有料老人ホーム(介護付きホーム)
有料老人ホームの中で「介護付き」と名乗ることができるのは、厚生労働省が定めた基準を満たし、都道府県により「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設だけです。
介護が必要な方々が生活するこの施設では、食事、入浴、排泄の介助のほか、掃除や洗濯といった家事サービスも行われ、名前からも分かるように充実した介護サービスが提供されるだけでなく、機能維持や体力向上を目的としたレクリエーションやリハビリテーション(機能訓練)も行われています。
介護付き有料老人ホームには「介護専用型」と「混合型」の2種類があります。
・介護専用型…..介護保険の要介護認定を受けている方が入居対象
・混合型…..健康で自立した生活ができる方、要介護状態の方のどちらでも入居可能
介護付き有料老人ホームは24時間体制で介護サービスを提供する施設となっており、さらに日中は看護スタッフが常駐し、医療行為を含むケアを受けることができます。
また、介護保険サービスが定額であるため、月々の予算を立てやすいというメリットもあります。
介護付有料老人ホームの契約は居室や共有部分、介護サービス、生活支援などの費用をまとめた
「利用権方式」が一般的で、この方式では入居者が亡くなるまで利用権を保持することができます。
また、利用権方式の支払い方法には前払いが含まれることがあるため、契約時にはその点に注意が必要です。
2.住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、主に65歳以上の自立から軽度の要介護者を対象とした施設です。
ここでは、食事の提供や洗濯、清掃などの生活支援が行われますが、入浴や食事の介助といった
介護・医療サービスは提供されていません。
そのため、利用者は別途介護サービスを契約する必要がありますが、多くの施設内には介護事業所が併設されており、スムーズにサービスを受けることが可能です。
しかし利用する介護サービスを自由に選べるメリットはありますが、サービスの利用状況によっては介護費用が高額になる点には注意が必要です。
居室は基本的に個室となっており、プライベートな空間が確保されているため、自由度の高い生活を送ることができます。
施設はバリアフリー設計ではあるものの、重度の要介護者では対応できない場合もあり、また、病気やケガによって介護度が進行すると住み続けることが難しくなり、転居が必要になるといったリスクも考慮しなければならないでしょう。
3.健康型有料老人ホーム
健康型有料老人ホームは健康で自立した高齢者が入居するための施設で、基本的には介護サービスは提供されず、食事や掃除、洗濯などの生活支援サービスが中心です。
健康型有料老人ホームではレクリエーションや娯楽、様々なイベントなどが用意されており、利用者同士の交流を図りながらアクティブなシニアライフを送ることができます。
施設にはジムやプール、シアタールームなどの多様な娯楽設備が整っており、さまざまなイベントも開催されていますが、これらの充実した設備やサービスにより、他の高齢者向けの住まいと比べて利用料や前払金が高額になることが多いです。
医療サービス・介護サービスはありませんが、健康相談や安否確認サービスが用意されています。
入居対象は主に60歳以上ですが、自立した高齢者が対象であり、入居中に認知症を発症したり要介護認定を受けたりすると、退去を求められることもあります。
有料老人ホームの費用の目安
有料老人ホームの初期費用・月額費用の目安は以下の通りです。
※有料老人ホームの料金は、施設やタイプによって異なります。
有料老人ホームの入居一時金
入居一時金は入居者が施設の設備やサービスを利用する権利を得るための費用となります。
有料老人ホームにおける入居費用の支払い方法は、大きくわけて全額前払い方式(一時金方式)、
月払い方式、併用方式の3つがあります。
入居金には償却・クーリングオフ制度がある
有料老人ホームには入居期間に基づいて償却が行われ(入居時に支払った一時金が入居していた期間に応じて返還されること)、退去時に払いすぎた金額が返還される仕組みがあります。
住んでいる期間が長くなるほど入居金は償却され、退去時に返還される金額は少なくなります。
また、入居金の償却には初期償却と均等償却の2つの方法があります。
初期償却は入居金が一定の割合で減額されることを指し、この割合は各ホームによって異なるため、入居を検討する際には必ず確認が必要です。
均等償却は初期償却後の残高を入居期間に応じて償却する方法で、償却期間はホームによって異なりますが、一般的には5年から15年程度です。
償却期間が終了する前に退去した場合、未償却分の入居金は返還される場合があります。
また、有料老人ホームにはクーリングオフ制度があり、契約後90日以内であれば無条件で契約を解除することができます。
この制度は入居者を保護するために設けられていますが、解約時には入居期間中に発生した家賃や食費などの費用は返金されないため、実際に支払った分は負担しなければなりませんので注意が必要です。契約前にはしっかりと内容を理解し、後悔しないように契約しましょう。
有料老人ホームの契約形態
有料老人ホームの契約形態には、居住部分と介護や生活支援等のサービス部分の利用契約が一体となった「利用権方式」、一般の賃貸住宅と同じ「建物賃貸借契約」、生涯住み続けることができる「終身建物賃貸借契約」の3タイプがあります。
・利用権方式
有料老人ホームを利用するための権利を購入する契約方式です。
利用権とは介護や生活サービスを受ける権利、共有スペースや居室を利用する権利が含まれますが、
所有権ではありません。
入居者が亡くなると、その権利は消失し、遺族が相続することはできません。
・建物賃貸借契約
一般の賃貸住宅と同様に毎月の家賃や管理費、水道光熱費を支払うことで居住の権利を得る方式です。
この方式では入居者が亡くなった場合、住む権利が相続人に引き継がれます。
・終身建物賃貸借契約
賃借人は生涯同じ家に住み続けることができますが、契約は死亡時に終了し、相続もありません。
「介護付き」は介護サービスの利用料が定額に
介護付き有料老人ホームは、介護サービスの一種である「特定施設入居者生活介護」の提供を許可された「特定施設」の指定を受けた施設です。
そのため介護保険制度が適用され、費用は要介護度によって異なりますが、利用した介護サービス費用のうち一部(1~3割)を負担します。
「住宅型と健康型」は介護サービス利用料を利用した分だけ支払う
特定施設の指定を受けていない住宅型・健康型有料老人ホームで入居者が介護サービスを受けるためには、訪問介護事業所やデイサービスなどの居宅系介護サービス事業者と個別に契約を結ぶ必要があります。
この場合、介護サービスの自己負担額は在宅で利用した際と同様に、実際にサービスを利用した分だけの費用が発生します。
介護サービスの費用は利用したサービスの量・種類によって異なり、利用者は利用した介護サービス費用のうち一部(1~3割)を負担します。
有料老人ホームの費用に消費税はかかる?
有料老人ホームを利用する際の費用には、消費税がかかるものとかからないものがあります。
介護サービス費全般は消費税が非課税です。
消費税法では社会政策的な配慮から、課税対象になじまないものはすべて非課税とされています。
介護サービスも非課税の対象となり、利用した際に事業者側に支払う1~3割の自己負担額には、消費税はかかりません。
具体的には、介護付き有料老人ホームの特定施設入居者生活介護や、住宅型有料老人ホームの訪問介護、デイサービスなどのサービスにおいて、利用者が支払う自己負担額には消費税が含まれません。
一方で、食事費用などは課税対象となるため、月額利用料を計算する際には注意が必要です。
また、訪問系サービスにおいて利用者の選定によって交通費が発生した場合、あるいはデイサービスの利用時に利用者の選定によって送迎費が発生した場合なども消費税がかかります。
おわりに
公的施設への入居待機者が多いという現在の状況下で、民間企業が運営する有料老人ホームの需要は年々高まりつつありますが、将来的なコストを考えると、安易に施設を決める事は極めて困難です。
ご自身やご家族の身体状況や経済状況をよく踏まえつつ、快適に過ごせる環境を模索するためには、
事前に様々な情報を得ておくことが大変重要な判断材料となります。
大切な将来設計のために、こちらの記事が少しでも参考になれば幸いです。
次回は有料老人ホームへ入居するまでの流れについて解説いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
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過去の記事をテーマ別にまとめております。よろしければご参照ください。
参考リンク
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/001347959.pdf
公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット
https://www.tyojyu.or.jp/net/kaigo-seido/shisetsu-service/yu-home.html