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【介護サービスが必要になったら】介護の基礎知識(3)~介護保険施設とは?~

はじめに

介護保険施設とは、介護保険に基づいて介護サービスを提供する高齢者福祉施設のことを指します。

本記事では、介護保険施設の種類とそれぞれのサービス内容や特徴、入居条件などについて解説いたします。

→前回の記事はこちらからどうぞ

介護保険施設とは?

介護保険施設は介護保険法に基づく高齢者福祉施設で、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、

介護医療院の3種類があります。

入居対象者は、65歳以上の高齢者または特定疾病により介護が必要な40歳から64歳の要介護者です。

これらの施設では入居時にまとまった入居金は不要で、介護保険の財源を活用して運営されています。そのため、月額費用は有料老人ホームと比較して安価で利用できるというメリットがあります。

3つの施設の特徴

   ※認知症の方・看取り対応ともに入居不可・対応不可の施設もあります

入居一時金について

介護保険施設は民間の有料老人ホームとは異なり、入居時に一時金が不要です。

月額費用には居住費、食費、介護サービス費、その他の費用が含まれますが、これらの費用は有料老人ホームと比較して割安になっています。

有料老人ホームなどとの違いは?

有料老人ホームは民間企業が運営しており、比較的軽度の要介護高齢者でも入居可能な施設です。

入居時には一時金が必要で、月額費用は高めに設定されています。

一方、介護保険施設は地方自治体や社会福祉法人が運営しており、施設によっては重度の要介護高齢者が入居します。

こちらは入居一時金が不要で、月額費用も安価に設定されているため、入居希望者が多い傾向があります。

ただし、公的施設は要介護認定1〜5を受けた方を対象としており、民間施設よりも基準が厳しく設定されています。

1.特別養護老人ホーム(特養)の特徴

特別養護老人ホームは通称「特養」とも呼ばれ、自治体や社会福祉法人などが運営する公的施設です。

利用者の日常生活を支えるために、食事、入浴、排泄の介助や身の回りの世話を中心とした介護サービスを提供しています。また、レクリエーションやリハビリテーションなどの活動も行われており、利用者の生活の質を向上させることを目指しています。

入居条件

介護保険施設の中で特養だけ「要介護3~5」の認定がある方と限られています。

居室

特養の居室のタイプは以下の4種類です。

①従来型個室:1人1部屋の個室タイプ

②ユニット型個室:10人以下のユニットごとに共有スペースを併設されているタイプ

③多床室:広部屋で2~4人が生活するタイプ

④ユニット型個室的多床室:ベッドごとにパーテーションの仕切りがあるタイプ

入居希望者が多く待機時間が長い

特別養護老人ホームは入居一時金が不要かつ月額費用が比較的安価であるため、入居希望者が多く、入居までに時間がかかる傾向にあります。

また、特別養護老人ホームへの入居を待つ間に有料老人ホームに入居するケースが増加しているそうです。そのため安価な価格設定の有料老人ホームも増えているようです。

2.介護老人保健施設の特徴

介護老人保健施設は自宅と病院の中間施設として位置づけられた介護施設で、医療法人や社会福祉法人によって運営されています。

この施設は「老健」とも呼ばれ、主にリハビリテーションを目的としています。

常勤の医師がいるだけでなく、リハビリテーションの専門家である理学療法士や作業療法士なども勤務しています。

利用者は在宅復帰を目指してリハビリに取り組むことができるため、特別養護老人ホーム(特養)とは異なり、生活の場としての機能は持ちながらも、リハビリに特化した施設であることが特徴です。

入居条件

入居対象者は「要介護1~5」と認定された高齢者で、主に病院での治療を終えた方々です(要支援1〜2の方は対象外となります)

65歳未満の方でも要介護状態の特定疾病であれば、入居は可能です。

介護老人保健施設(老健)の入居期間は、原則として3カ月から長くて1年程度です。在宅復帰を目的とした施設であるため、入居後3カ月ごとに自宅で生活を送れる状態になったかどうかが検討される仕組みになっています。

ただし、地方など場所によってはそれより長いケースや、施設によっては3カ月よりも短い期間しか利用できないケースもあります。

3.介護医療院の特徴

介護医療院は2018年4月に新たに設けられた施設で、経管栄養や膀胱カテーテル、喀痰吸引など、医療と介護の両方が必要な要介護高齢者が入居し、長期で利用できます。

運営は医療法人によるもので、医師や看護師による手厚い医療ケアが受けられます。

また、介護医療院は2024年に廃止された「介護療養型医療施設」の主な転換先として新設された施設です。

個室よりも4人部屋の「多床室」が多いことから、入居者は比較的少ない費用負担で利用することが可能で、パーテーションや家具による仕切りが設けられ、しっかりとしたプライベート空間が確保されています。

入居条件

入居対象は「要介護1~5」と認定され、継続的な医療・介護を必要とする高齢者です。

療養病院ほどの重度な医療的ケアは必要としないものの、介護施設では対応できない医療が必要な方の受け入れ先になっています。

医療面での人員配置が手厚い

介護医療院にはⅠ型とⅡ型の2種類があり、利用者像や人員配置基準、入居者に対する基準などに違いがあります。

Ⅰ型介護医療院の人員配置体制は、

医師が入居者48人につき1人

薬剤師が入所者150人につき1人

看護職員は入所者6人につき1人

介護職員は入所者5人につき1人、の割合で配置されています。

Ⅱ型介護医療院の人員配置体制は、

医師が入所者100人につき1人

薬剤師が入所者300人につき1人

看護職員と介護職員は入所者6人につき1人、の割合で配置されています。

介護保険施設は医療費控除の対象になる?

介護保険施設やリハビリ、訪問看護などの医療系サービスは医療費控除の対象となっています。

医療費控除は1年間に支払った医療費が一定の基準額を超えた場合に適用される制度で、確定申告をすると超過した金額が課税対象の所得から控除される仕組みとなっています。

医療費控除は1年間に支払った医療費が10万円以上の場合に所得から控除されますが、医療費控除対象となる費用は介護サービス費、食費、居住費などで、日常生活費や特別なサービス費(例:日用品、理美容代、おむつ代など)は控除の対象外となります。

おむつに関しては、医師から「おむつ使用証明書」を発行してもらい、おむつが欠かせない医療行為だと証明できれば、医療費控除の対象となります。

おわりに

介護保険施設は入居費用が比較的安価であるため、経済的な負担が少なくて済むというメリットがありますが、そのために入居希望者が多く、すぐには入居できないという一面もあります。

老後の生活の質を左右する重要な選択であるため、各施設の特徴を理解した上で入居に向けた相談を前もって進めることが理想的です。

どの施設に入居するかの判断が難しい場合は、地域包括支援センターに相談することをお勧めします。

トピックス【介護サービスが必要になったら】記事のご案内

過去の記事をテーマ別にまとめております。よろしければご参照ください。

介護保険の基礎知識①~⑨

介護の基礎知識(1)~

参考リンク

厚生労働省・介護医療院公式サイト

https://www.mhlw.go.jp/kaigoiryouin

公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット

https://www.tyojyu.or.jp/net/kaigo-seido/shisetsu-service/kaigoiryoin.html