【介護サービスが必要になったら】介護の基礎知識(4)~特別養護老人ホームと養護老人ホームの違いとは?~
はじめに
特別養護老人ホームと養護老人ホームは名称こそ似ておりますが、それぞれの施設の目的や入居基準、利用できるサービスなどは大きく異なります。
本記事では特別養護老人ホームと養護老人ホームの役割、入居条件、費用の違いなどについて解説いたします。
特別養護老人ホームと養護老人ホームの特徴比較表
1963年に制定された老人福祉法に基づいて「老人ホーム」が規定された際、養護老人ホームの類型として特別養護老人ホーム(以下、特養)が設立され、特養はこれまでの養護老人ホームの対象者の中でも要介護者の介護をすることを主な目的として作られました。
特別養護老人ホームと養護老人ホームの特徴を比較したものが下記の表になっております。
両施設の違いは「目的」にあり
特養は高齢者が介護や生活支援を受けながら居住するための施設で、主な目的は介護であるため、介護保険サービスを利用して生活することができます。
一方、養護老人ホームは経済的または環境的な理由で困窮している高齢者が自立した生活を送るための施設で、介護保険サービスの対象にはなっておらず、長期的な利用ができる施設ではありません。
ここでは、社会復帰を支援することが主な目的となっています。
入所の手続きでは、特養は本人と施設の間で契約が結ばれますが、養護老人ホームは市区町村が調査を行い、必要性が認められた場合に措置として入所が決定します。
入居条件の違い
特養と養護老人ホームはともに、主に65歳以上の高齢者を対象としていますが、それぞれ異なる条件があります。
特養は要介護3~5に認定されていることが基本条件ですが、特定16疾病と認められた40~64歳までの方で、要介護3以上の認定を受けている方や要介護1・2の方も特定の条件を満たせば入居可能です。
一方、養護老人ホームは、環境的または経済的な理由で困窮している高齢者が対象です。
環境的理由には、身寄りがないなど在宅生活が困難な状況が含まれ、経済的理由には生活保護世帯や住民税非課税世帯が該当します。
特養と比較すると、養護老人ホームには身体的には自立した入居者が多い傾向にあります。
サービス内容
特養は利用者への介護を目的とした施設で、充実した介護サービスを提供しています。
日常生活に必要な食事、入浴、排泄などの介護や、機能訓練、健康管理などの療養上のサービスを受けることができ、介護職員が常時配置されています。
一方、養護老人ホームは生活困窮者の養護を目的としており、基本的には自分で身の回りのことができる方を対象としています。
そのため、施設による介護サービスは行われず、介護職員の配置も義務ではありません。
養護老人ホームは2005年の介護保険法改正により「外部サービス利用型特定生活入居者生活介護」の指定を受けています。そのため、介護が必要になった場合は、施設の相談員に相談し、外部の介護サービスを利用することもできます。
特養と養護老人ホームの費用
特養と養護老人ホームは社会福祉法人や自治体が運営する公的な施設のため、入居一時金は0円となります。
特養では介護度や部屋の種類、所得によって費用が異なり、一般的には月額8万から14万円程度が必要となり、さらに日常生活にかかる費用も別途必要です。
所得が低く資産が少ない場合は、居住費や食費の軽減が受けられる可能性があります。
一方、養護老人ホームでは前年度の収入に基づいて費用が決定され、月額は0円から14万円です。
災害を受けた場合や生活保護法の適用を受けた場合、そのほか特に負担能力がないと認められた場合には、施設の費用が減額または免除されることがあります。
特養と養護老人ホームのメリット・デメリット
特養のメリット
特養の主なメリットは入居一時金が不要であること。
そして所得に応じた利用料の減免制度があり、月々の利用料は民間の有料老人ホームと比較して安価な場合が多いです。
また、月々の利用料の半分は医療費控除の対象となるため、経済的な負担が軽減される点も大きなメリットです。
特養では介護度が上がったり認知症が進行しても、看取りまでの支援を行ってくれるため、途中で退居することなく終身入居が可能であることも魅力の一つです。
特養のデメリット
特養の主なデメリットは入居待機者が多いことです。
地域や施設によって待機期間は異なりますが、希望してもすぐに入居できないのが現状です。
また、2015年4月の制度改正により、65歳以上の入居条件が要介護3以上に引き上げられたため、特養への即入居がさらに難しくなっています。
養護老人ホームのメリット
養護老人ホームは経済的に困難な高齢者を受け入れるための施設であるため、他の施設に比べて利用料金が大幅に低く設定されています。
生活保護法が適用される場合、費用が減額または免除されることがあり、経済状況によっては月額利用料が徴収されないこともあります。
また、養護老人ホームは自立支援を目的としており、経済面でのアドバイスも受けられるようになっています。
入居中だけでなく、社会復帰後も安心して生活できるように支援することが、この施設の特長です。
養護老人ホームのデメリット
養護老人ホームの入居条件は自立状態の高齢者に限定されています。
つまり、介護が必要な高齢者はこの施設に入居することができません。
そして入居後に要介護状態になった場合、訪問介護や通所介護を利用することが可能ですが、特養と比べると介護体制が整っていないという点がデメリットです。
また、入居を希望する場合も必ずしも入居できるわけではなく、市区町村がその可否を決定します。
入居のハードルは自治体によって異なり、地域によって大きな差が生じています。入居したい場合は、まず自治体の担当窓口に申し込みを行い、入居措置を受けます。
おわりに
特別養護老人ホームと養護老人ホームでは、目的や役割が大きく異なることが分かりました。
経済的な理由で自宅に住むことが難しい場合や、自宅での介護が受けられない場合には、自己判断に頼らずに、まずは最寄りの地域包括支援センターに相談することをお勧めします。
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参考リンク
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000663498.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/000656699.pdf
公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット
https://www.tyojyu.or.jp/net/kaigo-seido/shisetsu-service/toku-home.html