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【介護サービスが必要になったら】介護の基礎知識(10)~在宅介護で利用できるサービスについて~

はじめに

在宅介護とは、高齢者や病気・障がいを持つ方が自宅での生活を続けられるように必要な介護やサポートを自宅で行うことですが、その介護の大部分を担う家族にとっては身体的・精神的な負担がかかるだけでなく、時間の制約も伴います。

そのような時、訪問介護サービスや介護福祉士、看護師など専門家のサポートを受けることで家族の負担を軽減することができます。

本記事では高齢者の在宅介護サービスの種類や利用の流れ、介護保険で利用できるサービスなどについて解説いたします。

→前回の記事はこちらからどうぞ

在宅介護とは?

在宅介護とは、老人ホームなどの施設へ入居せずに自宅で介護を受けることを指します。

メリットは長年慣れ親しんだ自宅で生活を続けられることですが、在宅での介護には家族にかかる介護負担が大きくなるというデメリットもあります。

より良い介護を実現するためには、介護を受ける側だけでなく、介護を行う家族の負担を考慮することも非常に重要です。

在宅介護のメリット

在宅介護のメリットは、住み慣れた環境で過ごせることや家族と共に生活を続けられることです。

介護を受ける本人は、同居家族の支えによってメンタル面での安定を保つことができ、住み慣れた地域に留まることで環境の変化を伴うことなく、近隣の人々や友人との関係を維持しながら生活を楽しむことができます。

また、訪問介護サービスやデイサービスなど外部の介護事業者を利用することで、同居家族のサポートだけでなく、利用者の状態に応じた多様な介護サービスを選択することもできます。

在宅介護では必要なサービスを自由に選べるため、固定料金の老人ホームに比べて介護費用を抑えることができる点も大きなメリットです。経済的な負担を軽減しながら、質の高い介護を受けることができます。

在宅介護のデメリット

在宅介護では介護者が肉体的、精神的、時間的な負担を一人で抱え込んでしまうことが多く、このような状況下では、介護者が限界に達してしまう可能性も出てしまいます。

自宅で家族を介護したい、お世話をしたいという気持ちは大切ですが、全ての負担やストレスを一人で抱えてしまうと、心身に非常に大きな悪影響を及ぼします。

このような事態を避けるために、介護サービスや生活支援サービスなどを必ず利用しましょう。

また、必要に応じて施設入所を検討することも重要な選択肢となります。

寝たきりの方の介護には、移動介助やベッド介助、着脱介助、車椅子への移動介助などが含まれますが、介護を行う人にとっては腰痛や睡眠不足、過労などの問題が生じやすく、特に介護をする高齢者の「老々介護」が深刻な問題となっています。

家族の介護は24時間365日続き、終わりも見えず、場合によっては介護される方の認知症による暴言や予期せぬ行動、コミュニケーションの難しさが介護者に大きなストレスを与えます。このような状況が続くと、介護者の精神的健康が損なわれ、介護うつなどの問題が生じることがあります。

さらに介護離職という状況も大きな障害となります。介護される方の身体状況が悪化したり、介護にかかる時間が増えることで、仕事を辞めざるを得ないケースが多く見られます。総務省のデータによると、年間約10万人が介護や看護を理由に仕事を辞めていることが明らかになっています。

在宅介護で利用できるサービスの種類

在宅介護で利用できるサービスには、以下のようなさまざまな種類があります。

1.自宅で受ける介護サービス

・訪問介護

訪問介護員(ホームヘルパー)や介護福祉士が介護を受ける方の自宅を訪問し、食事や入浴、トイレの介助といった身体介護や買い物や調理、洗濯、掃除などの生活援助も行います。

・訪問入浴介護

自宅の浴槽を使っての入浴が難しくなった方向けに、看護スタッフや介護スタッフが利用者の自宅を訪れ、入浴移動車という専用車両を用いて車内でそのまま入浴したり、自宅内に簡易浴槽を運びこみ、そこで入浴の介護を行うサービスです。

・訪問看護

看護師が自宅を訪問し、医師の指示に基づいて医療的な処置や診療の補助を行うサービスで、療養中の方に対して健康チェックや必要なケアを行うことを目的としています。サービス事業者を選ぶ際には、指定の訪問看護ステーションと医療機関での費用が異なるため、注意が必要です。

・訪問リハビリテーション

理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が自宅を訪問し、医師の指示に基づいてリハビリテーションを行うサービスです。身体機能の維持や回復、さらには自立支援を行うことを目的としています。

・夜間対応型訪問介護

夜間に利用する方のために、介護スタッフが定期的に自宅を巡回します。また、利用者の要請に応じて訪問し、排せつや入浴、食事などの介助を行います。「定期巡回」と「随時対応」の2種類のサービスがあります。

・定期巡回、随時対応型訪問介護看護

介護と看護が密に連携しながら、利用者の自宅を定期的に訪問するサービスです。利用者からの要請があった場合、24時間対応が可能で、介護と看護の両方を行います。

・居宅療養管理指導

医師、歯科医師、看護師、薬剤師、歯科衛生士、管理栄養士などの医療系の専門職が自宅を訪問し、療養上の管理や指導を行います。

2.施設に通って受ける介護サービス

・通所介護(デイサービス)

デイサービスセンターなどの施設では、介護スタッフが入浴や食事の提供などの生活支援を行っています。また、生活機能訓練も実施されており、利用者の自立を促進することを目的としています。

・通所リハビリテーション(デイケア)

介護老人保健施設や病院で、施設のスタッフである理学療法士や作業療法士、言語聴覚士のもと、必要なリハビリを日帰りで行うサービスです。デイサービスに比べて医学的ケアと機能回復訓練が強化されています。

・地域密着型通所介護

利用定員が18人以下の小規模な老人デイサービスセンターで、食事や入浴などの日常生活上の支援と生活機能向上のための機能訓練、口腔機能向上サービスなどを受けることができます。

・認知症対応型通所介護(認知症対応型デイサービス)

特別養護老人ホームやデイサービスセンター、認知症グループホームでは、食事や入浴、トイレなどの介助など利用者の生活を支えるための介護サービスが行われており、機能訓練も含まれています。

3.宿泊して受ける介護サービス

・短期入所型サービス(ショートステイ)

介護施設に短期間入所し、施設に入所している方と同様に介護や機能訓練を受けることができます。

一般的にショートステイと呼ばれる短期入所生活介護と医療型ショートステイとされる短期入所療養介護の2つがあり、1日単位で利用でき、最長で30日間の利用が可能です。

利用期間中は介護から一時的に離れることができるため、日々の介護に疲れを感じているご家族の休息時間を確保することも可能です。

4.複合型のサービス

在宅介護には訪問型、通所型、宿泊型のサービスが組み合わさった複合型サービスがあり、小規模多機能居宅介護と看護小規模多機能居宅介護の2つがあります。

・小規模多機能型居宅介護

施設への通いを中心に、訪問介護や施設宿泊を組み合わせて提供しているサービスです。介護や生活支援、機能訓練などが行われ、利用者のニーズに柔軟に対応しています。

・看護小規模多機能型居宅介護

小規模多機能居宅介護のサービスに訪問看護を組み合わせた介護サービスです。医療的なケアや看護が必要な方を対象としており、要介護1以上の方が利用できます。

福祉用具のレンタル・購入や住宅改修

上記のサービス以外にも、介護を必要とする方の自立支援に向けた福祉用具のレンタルや販売、介護リフォームなどの住宅環境の改修支援などがあります。

介護保険が適用されるため、自己負担額は通常の価格よりも低く、1~3割で利用可能です。

特に要介護2~要介護5の方々は生活援助がほぼ必要とされるため、これらのサービスを活用し、暮らしやすい生活環境に整えていきましょう。

・福祉用具レンタル、購入

福祉用具は車いすや特殊寝台(介護ベッド)のように、洗浄や消毒が可能で他の利用者と共有できるものはレンタルが可能です。

一方、腰掛便座や入浴補助用具のように共有が難しいものは購入が必要となります。

ただし、介護保険が適用される対象品目は限られているため、事前に確認が必要です。要介護度1~5、または要支援1~2の方が利用できますが、要介護度によってはレンタルできない用具もあります。

・住宅改修(介護リフォーム)

介護保険制度において、身体の状況や住宅の状況に基づき、改修が必要と認められた場合に市区町村から補助金が支給されます。

この補助金を利用して手すりの取り付けや段差の解消などの住宅改修サービスを受けることが可能で、最大20万円まで保険が適用されます。利用者は、かかった費用の1割~3割までを負担します。

保険を利用しない自費サービス

介護保険が適用されない介護サービスを「介護保険外サービス」と呼び、全額自費となります。

訪問介護を行う事業者の中には、散歩の付き添いや介護者のための家事支援など、保険が適用されないサービスを「保険外訪問サービス」として提供している所もあります。

また、NPOやボランティア団体、民間企業も、介護保険ではカバーできない生活支援サービスや配食サービスを行っています。さらに、自治体が「おむつの支給・補助」や「訪問理美容助成」「短期宿泊事業」などの独自の予算を設け、高齢者向けに安価なサービスを提供している所もあります。

在宅介護サービスを利用するまでの流れ

①要介護認定を申請後、認定調査を受ける

        

②認定結果を受けてケアマネジャーによるケアプランを作成

        ↓

③サービスの利用開始

在宅介護の経済的負担を減らすための制度

・介護休業給付金

介護休業給付金は要介護者の介護を行うために仕事を休む必要がある方が受け取れる制度です。

この給付金を受けることで給与所得の67%が支給されるため、在宅介護中の経済的な不安を軽減することができます。

雇用保険の被保険者が介護休業給付金を受け取るためには、条件があります。

まず、1年以上の雇用期間が必要で、2週間以上の休業が求められます。

また、休業後には現在の勤務先に復帰することが条件となります。給付金を受けるためには、勤務先に事前に介護休業を取得したい旨を伝え、ハローワークに必要な書類を持参し、手続きを行う必要があります。

・高額介護サービス費

1カ月に支払った自己負担の合計が一定額を超えた場合に、その超えた分が返金される仕組みです

例えば、市町村民税の課税所得が380万円(年収約770万円)の世帯では、月額負担限度額が44,400円に設定されています。この金額を超えた分については、自治体に申請することで「高額介護サービス費」として払戻しを受けることができます。

ただし、福祉用具の購入費や施設サービスの食費、居住費、日常生活費などはこの制度の対象外となるため、注意が必要です。

在宅介護に限界を感じたら…

介護を負担に感じた場合は、まずケアマネジャーに相談し、ケアプランの見直しを行ってみましょう

また、介護者が息抜きできるように、短期入所生活介護(ショートステイ)を利用することも一つの選択肢です。専門職による質の高い介護や支援を受けられるため、本人や家族にとって大きなメリットがあります。

在宅介護の限界の目安は?

目安としては要介護3以上です。

介護度が重い方を対象とする特別養護老人ホームでは入居条件として「要介護3以上」が設定されています。要介護3の状態になると、寝返りや歩行、排泄などの日常生活においてほぼ全面的な介護が必要となり、在宅介護だけでは対応が難しくなることがあります。

一方、要介護2までの状態であれば、日常生活において部分的な介助が必要ですが、訪問型介護サービスやデイサービスを利用することで、在宅で安心して生活できるケースが多いようです。

おわりに

在宅介護では同居している家族が主に介護を行いますが、介護の必要度合いによっては非常に大きな負担がかかることがあります。

在宅介護は長期にわたる可能性があり、仕事やプライベートとの両立が難しくなることもあるため、

そのような場合は外部の介護サービスを積極的に利用し、介護の負担を分散させること、軽減することが大変重要です。

家族がすべての負担を背負い込むのではなく、無理をせずに介護を行うこと、共に暮らし続けられるような環境づくりを目指しましょう。

トピックス【介護サービスが必要になったら】記事のご案内

過去の記事をまとめております。よろしければご参照ください。

介護保険の基礎知識①~⑩

介護の基礎知識(1)~

参考リンク

厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/zaitaku/dl/zaitakuiryou_all.pdf

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000044901.pdf

公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット

https://www.tyojyu.or.jp/net/kaigo-seido/kaigo-service/index.html