【介護サービスが必要になったら】介護の基礎知識(7)~認知症デイサービスとは?~

はじめに
在宅での認知症の方の介護は家族にとって大きな負担となることがあります。
そのような時に利用したいのが認知症対応型通所介護です。
認知症対応型通所介護は通称「認知症デイサービス」と呼ばれており、認知症の方に特化した専門的なケアを提供する介護保険サービスです。日帰りでの利用になりますが、事業所のスタッフが自宅から事業所までの送迎も行います。
本記事では認知症デイサービスの具体的なサービス内容や通常のデイサービスとの違い、事業所を選ぶ際のポイントなどについて解説いたします。
認知症デイサービスとは
認知症デイサービスとは認知症の方が自宅で自立した生活を送るための介護保険サービスで、通常のデイサービスとは違い、認知症の方に特化した支援が行われます。この施設では機能訓練やレクリエーションを通じて、認知症の方の心身機能の維持・向上を目指しています。
認知症の症状や進行スピードは個々に異なるため、利用者一人ひとりの状態に応じた介護を受けることができ、また、認知症の方の社会的孤立を解消し、介護を行う家族の負担を軽減することもできます。
通常のデイサービスとの違い
1.少人数制による手厚い介護
認知症デイサービスの利用者定員は介護保険法により12名以下と定められているため、介護職員一人当たりが受け持つ利用者数が少なく、その分一人ひとりに合わせたサービスが受けられます。
認知症の方は症状によって多くの人がいる場所を避けたり、知らない人とのコミュニケーションが難しい場合があるため、一般的なデイサービスを利用できないこともありますが、認知症デイサービスではこうした不安を軽減することができます。
2.専門的なケアを受けられる
認知症デイサービスの施設スタッフは認知症患者への対応やその知識に精通しています。
特に管理者は「認知症対応型サービス事業管理者研修」を修了しており、高度な専門知識を持っています。このような環境により、少人数での手厚い介護が提供され、認知症特有の症状に応じたケアが実施されています。
3.地域密着型サービス
2006年の介護保険法改正により、認知症や介護が必要な高齢者が住み慣れた地域で安心して生活できる「地域密着型サービス」がスタートしました。
地域密着型サービスとは、認知症や介護が必要な高齢者が住み慣れた地域で安心して生活を続けられるように提供されるサービスのことです。そのため、各事業所を利用できるのは原則として事業所のある市区町村に住んでいる方のみとなっており、認知症デイサービスもこのサービスの一環として提供されています。
認知症デイサービスの種類
認知症デイサービスは単独型、併設型、共有型の3つのタイプがあります。

認知症デイサービスの利用対象者
認知症デイサービスの対象者は、認知症と診断され、要介護1以上の介護認定を受けた方です。
利用するためには、事業所と同じ市町村に住んでいる必要があります。
また、要支援1や要支援2の方でも認知症の症状が明らかに見られる場合には、介護予防認知症対応型通所介護を利用することが可能です。
認知症デイサービスのサービス内容
1.食事
認知症デイサービスでは食事の提供が行われており、利用者が準備に参加することも行われています。
具体的には他の利用者と一緒におかずの盛り付けをしたり、お箸を並べたりする活動があり、利用者同士の交流や自立支援が促進されています。
2.リハビリやレクリエーション
デイサービスでは認知症の進行を緩やかにし、症状を和らげるためのリハビリやレクリエーションが行われています。
具体的には脳トレや回想法、体操など、認知症に効果的な活動が多様に実施されています。
各デイサービスによって提供されるレクリエーションやイベントは異なるため、見学の際にはどのような活動が行われているかを確認することが重要です。
3.健康チェック
認知症デイサービスでは血圧測定などの健康チェックも実施されます。
利用者の健康状態を把握するとともに、必要に応じて薬の管理も行われるため、飲み忘れ等を防ぐことができ、安心して利用できます。
ただし、各施設によって健康チェックの内容や対応が異なるため、事前に施設に確認しておきましょう。
上記の他にも施設によって送迎サービスやボランティア、希望者には入浴などのサービスも行われています。
利用料金
料金は介護保険内のサービス費用に対する自己負担割合である1~3割で、所得が多いほど自己負担が増加します。
食費やおむつ代は別途必要で、食費は1食あたり約500円が一般的です。
また「単独型」「併設型」「共用型」の3つのタイプによって、それぞれ料金が異なります。
具体的な料金は事業所の種類や利用時間、介護度によって変動するため、事前に確認しましょう。

※介護保険負担割合1割としてサービス提供時間7時間以上8時間未満の場合
認知症デイサービスの事業所選びのポイント
1.見学をする
事前に見学をすることで、契約後に想像と異なる状況になることを避けることができます。
見学時には事業所の雰囲気やスタッフの対応、他の利用者の状態を確認することが大切です。
2.ケアマネジャーに相談する
事業所の見学先に迷った場合は、ケアマネジャーに相談してみましょう。
ケアマネジャーは近隣の施設に詳しく、利用者の状態や性格に合った最適な施設を紹介してくれます。相談の際には利用者の身体状況や性格、家族の要望などをしっかりとケアマネージャーに伝えることも重要です。
3.条件を決めておく
サービスを利用する際には、ご本人や家族が期待する内容や条件を事前に明確にしておくことが重要です。
というのも、事業所の利用をご本人が迷う時があるからです。
具体的には「大きなお風呂に入れる」「レクリエーションは嫌だけどリハビリは受けたい」「おいしいご飯が食べられる」といった条件を設定することで、利用者が事業所に行くことを楽しみに感じられるようになります。
このように条件を明確にすることで、事業所選びにおいて迷いが少なくなるでしょう。
4.利用者やスタッフの雰囲気を確認する
良い事業所は雰囲気が良く、活気があるのが特徴です。
スタッフの対応が気持ち良く、他の利用者も快適に過ごしている様子が見られる場合、その事業所は信頼できる可能性が高いと思われます。利用者に直接話しかけることで、実際の体験や感想を聞くことができるかもしれません。
また、体験利用を提供している事業所もあり、実際に通った際のイメージを具体的に掴むことができるため、本人が嫌がらない場合は体験利用を試してみることをお勧めします。
おわりに
認知症デイサービスを利用することで、利用者は心身の機能を維持・向上させることができ、他の利用者やスタッフとの交流が気分転換にもつながります。
また、介護を行う家族の身体的・精神的な負担を軽減する効果もありますので、興味のある方はぜひ事業所の見学・利用を検討してみてください。
トピックス【介護サービスが必要になったら】記事のご案内
過去の記事をまとめております。よろしければご参照ください。
参考リンク
厚生労働省
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group10.html
公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット
https://www.tyojyu.or.jp/net/kaigo-seido/chiiki-service/tsuusho.html