今回の記事では、障がい者を雇用後、問題が起きた場合の対応方法や、
長く働いてもらうにはどのような対策を取れば良いのかについて、
Q&A方式で解説いたします。
障がいにはさまざまな特性があるため、対策もさまざまです。
事例を交えてご紹介しますので、ぜひ参考になりましたら幸いです。
A. 新しい仕事や環境に慣れるのには時間がかかります。
作業習得や職場への適応状況、健康面の把握を日頃から行いながら、
成果をすぐに求めるのではなく、長い目で支援することが重要です。
作業習得のための支援
作業を行う目的を説明し、本人にとって分かりやすい方法で指導を行います。
職場適応のための支援
作業への取り組み方、休憩時の過ごし方、協力関係やコミュニケーション、
職場のルールへの対応などを確認し、必要に応じて改善のための指導を行います。
体調面・不安などの把握
体調が安定しているか、作業に不安がないかを確認します。
必要があれば、作業内容や作業量を調整します。
設備面などの職場環境の調整
設備が利用しやすいかどうかを確認し、必要に応じて改善を行います。
継続勤務の確認
継続して働くことができているかを確認し、困難がある場合は、
継続勤務が可能な勤務時間の調整、休憩時間の取り方などについて調整を行います。
企業による指導・指示命令系統の確認
本人への指導や指示命令系統が常に機能しているかを確認し、
より効果的なものとなるように改善を図ります。
定期的なふり返り
定期的な面談などにより、本人の気持ちを聞いてふり返りを行います。
また、本人の感想や希望、目標、企業から伝えたことなどを記録することも必要です。
支援を行う際には、さまざまな配慮や工夫が必要です。
その効果は本人が「分かりやすいと感じる」「これならやれると感じる」かどうかで
判断するようにしましょう。
・説明は、分かりやすい表現で長くならないようにする
・大事なポイントは強調する(複数回言う、メモにして示すなど)
・高圧的、感情的な言い方をしない
・説明済みの内容であっても、理解できていない場合は再度丁寧に説明する
・必要に応じて絵や写真を用いるなど、視覚的に分かりやすい方法で伝える
・作業のイメージが理解できるように、先に仕上がりや完成品などを示した上で伝える
・この作業を行った後はどうなるのかを伝えて、作業の結果どうなるのかがわかるように伝える
・褒める時は、漠然と褒めるのではなく、実際に伸びたところや改善したところ、
取り組み姿勢などを具体的に褒める
・注意する時は、理由を示して説明する、改善すべきところも併せて具体的に説明する
・緊急的な危険回避などで、強く注意したときは、
後に落ち着いた雰囲気を作り、理由を示して説明する
社内では、障がいの有無に関係なく、コミュニケーションが得意な人と苦手な人がいますよね。
障がいがあっても、それは同じです。
例えば、話すことが得意でも聞くことが苦手など、個人差があります。
障がい特性だけでなく、本人や支援機関からの情報も考慮しながら、
それぞれの特徴を活かした仕事の進め方を配慮することが重要です。
<コミュニケーションが苦手な場合の要因(課題)と配慮事項の例>
・相手の言った話の内容を理解できない
→説明者がポイントを絞り簡潔に説明する、または用紙に書いて説明する
・大勢の中で話を聞くことが苦手
→時間をとり静かな場所で個別に説明する
すぐに答えられない、言葉が出ない
→本人が話せるように時間をとる。紙に書いて表現してもらう。
本人が話しやすい落ち着いた場所を設定して説明する 。
A. 改善すべき問題が起きた時は、
問題となる行動と障がいのある社員が置かれている環境の情報を集めて
原因を考えることが、改善につながる第一歩です。
<改善すべき問題の原因と企業の担当者による改善策の例>
例1)パソコン入力作業で、その都度指示を受けて作業するが、ミスが多発している 。
▼注意するだけでなく問題の原因に着目しましょう。
本人:指示が理解できていない。手順や注意すべき点が分からない。
自分では正しく作業していると思っている。作業量が多く処理できない。
複数の指示があると混乱する。集中が続かない。 (本人が困っている状況)
企業の担当者:本人は作業を行うリズムができていないのではないか。
本人が分からない時に質問できていない。指示命令系統が統一されていない。
説明の話が長いかもしれない。
環境:雑音が多く本人にとって環境がよくないかもしれない。
上記を踏まえた企業の担当者による改善策の例
・本人にとって分かりやすい作業手順書を作成する
┗大事なところやミスしやすいところに印をつけて確認すべき点を明確にする
・自分から質問できるように最初の問いかけ方法を決める
┗質問するときの最初の言葉や合図を決める。
・上司等と確認のうえ、スモールステップの目標(時間、量)を定めて本人に伝える。
・耳栓をつけてもらうなど集中できる環境を作る。
長時間の継続作業に負担がないかどうかを確認しつつ、
本人が定期的な水分補給、肩回し、深呼吸などを取り入れ、
リフレッシュしながら作業を行うリズムを作ることができるように助言する等。
障がいのあるなしに関係なく、新しい職場というのは不安がいっぱいですし、
新しい仕事を覚えるのも大変ですよね。
障がいの特性に合わせて徐々に仕事を任せたり、工夫を凝らしたりすることが大切だと分かりました。
事例があると本人側、会社側の問題が分かりやすいですね。参考になれば幸いです。
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
https://www.jeed.go.jp/disability/data/handbook/q2k4vk000003kesx.html#1