(2)事業者の皆様へ はじめての障がい者雇用Q&A |採用計画の検討・採用の準備編
はじめに
前回は障がい者雇用の基礎知識について解説しました。
今回は実際に採用する際、採用条件や労働条件など、
一般の採用とはどのような点が異なるのか、
どのように進めていけばよいのかなどについてQ&A形式で解説します。
A. 社内の状況を分析し、障がい者雇用の目的を明確にした上で
具体的に採用計画を検討し、社内の共通認識を得た上で進めることが必要です。
<障がい者雇用の目的>
・支援機関から、障がい者でも働けるのではないかと勧められ、障がい者雇用を行う。
・多様な人材を雇入れ、多様な人材と共に働く社員の意識の向上を図り、組織の活性化につなげるため、障がい者雇用を行う。
すでに法定雇用率を達成している場合や
障がい者雇用義務の対象範囲外(労働者40人未満)の場合であっても、
企業は障がい者雇用の方針を明確にし、
社内で共通認識を図りながら、
積極的に障がい者雇用を進めていくことが必要です。
A. 労働者全員に対して、画一的な手段で申告を呼びかけることが原則です。
風評などを根拠に特定の人に呼びかけることは適切ではありません。
職場における障がい者であることの把握・確認については、
「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」が策定されていますので、
障がい者本人の意に反した雇用率制度の適用などが行われないようにするため、
採用後に障がいの有無の把握・確認を行う場合には、
雇用する労働者全員に対して、
画一的な手段で申告を呼びかけることを原則とするものとされています。
採用後に社員から障がいがあることや障がい者手帳を所持していることの申出があった場合は、
障がい特性に応じた支援(合理的配慮の提供義務)の対象となります。
本人の障がい特性や配慮事項について社内に周知する際は、
必ず本人の同意を得る必要があります。
周知の範囲や内容についても、本人の同意を得ることが重要です。
A. 社内の職務内容と求められるスキルを詳しく確認し、
新しい職務内容を作成することが大切です。
障がい者が従事する職務内容は、
具体的には採用が決定した障がい者の障がい特性や
本人の希望などを踏まえて確定することになります。
その際には、「職務内容の創出の方法」に従って検討するとよいでしょう。
A. 就業規則をはじめ、就業に関わる諸規程・制度は、障がい者雇用にあたっては特に変更する必要はありません。
①就業規則
「障がい者を雇用すると、就業規則の変更が必要ですか?」
という質問がよくあるそうですが、必ずしも変更する必要はありません。
障がい者の採用にあたっては、個別に配慮して勤務時間、
休憩時間、休暇、勤務場所等で就業規則と異なる労働条件を提示し、雇用契約を結ぶこともあります。
障がい者の雇用に関する法的規定を遵守しつつ、柔軟に対応することが重要です。
②人事評価制度
基本的には企業で実施している評価制度を運用します。
評価制度は、昇給、昇格、賞与査定などの裏付けという面を持つとともに、
それ以上に本人のモチベーションアップ、キャリアアップへの動機付けという面を持っていることを重視するとよいでしょう。
評価を行うためには、まず「目標を立てる」ことが必要です。
例えば、半期ごとに本人の現状にあった目標を話し合いの上で決めます。
結果を振り返り、「できたこと」「できなかったこと」をきちんとフィードバックします。
そして面談を通して、さらに次の目標を設定していきます。
障がいの状況などによっては、
目標の設定やフィードバックなどにおいて個別の配慮も必要です。
③健康管理制度
定期的な健康診断やストレスチェックは全員が受ける必要がありますが、
障がい者の中には、さまざまな理由でメンタル面が不調になる人もいます。
不安がある人には疲労度などに注意を払ったり、
定期面談を通じて体調を確認することが重要です。
産業医や保健師などの専門家に相談したり、個別面談を実施することも効果的です。
A. 採用後の職場定着を推進するためには、社内支援体制を整備し、
職場の人間関係や労働環境の改善を図ることが重要です。
効果的な体制を作るためには、配属部署の担当者、
人事担当部署、支援機関との連携がポイントとなります。
これにより、職場への定着がしやすくなるでしょう。
①社内支援体制を作る
障がい者の職場定着には、作業の指導だけでなく、職場環境や人間関係の改善も重要です。
障がい者の適応状況を把握し、必要に応じて支援を行うことが望まれます。
配属部署の支援担当者や管理者が相談窓口となり、チーム全体で
応援する意識が重要です。
②人事担当部署の役割
障がい者を雇用する際には、
配属部署の管理者や社員に負担がかかる可能性があるため、
人事担当者はバランスを保つことが重要です。
社内の支援体制だけでは不十分な場合は、
支援機関と連携することも重要です。
人事担当者は社内外のリソースを活用して障がい者の雇用を円滑に進めましょう。
③支援機関との連携
職業生活の中では、家庭や交友関係、
生活習慣の乱れなどが職務に影響を及ぼすことがあります。
障がいのある社員は、体調の安定のために継続的な通院が必要な場合もあります。
企業が直接関与できない生活や医療面の課題には限界があるため、
支援機関や医療機関と連携して対応することが重要です。
おわりに
障がい者の採用は、障害者雇用促進法により企業義務が定められており、
従業員数の規模に応じて雇用数の義務である法定雇用率が定められています。
近年、民間企業の法定雇用率が引き上げられている中、
初めて障がい者を採用する企業も増えているのではないでしょうか。
障がい者雇用についての知識を深めたいと思う企業も増えています。
障がい者採用では、障がいのある人が個人の能力や特性を活かしながら、
快適に働ける環境作りを目指すことで、互いに力を発揮し合うことができます。
ご参考になれば幸いです。
参考リンク
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
https://www.jeed.go.jp/disability/data/handbook/q2k4vk000003kesx.html#1
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