
日常生活の中、日々さまざまなストレスにさらされて、心身ともにお疲れ状態になってはいませんか?そのような時、静かで美しい自然の中でゆっくり過ごしてみてはいかがでしょうか?
大自然の中を歩いているだけで不思議と気持ちが落ち着いたり、気分が爽快になってリフレッシュできた、と感じたことがある方もいらっしゃると思います。
森林浴は医学的にもストレス軽減の効果が認められており、自然の中でならどこででもできる、とても手軽なリラックス方法です。今回は森林浴の効果についてご紹介いたします。
森林浴とは、森や木々に囲まれた自然豊かな場所を散策するなどして、樹木の香気や浄化された空気を浴びることで心身のリラックスを図ることを指します。
実はこの「森林浴」という言葉は日本発祥のもので、1982年に当時の林野庁長官であった秋山智英氏が「森林がもたらす療養効果の活用」を目的として提唱したものです。同年秋には長野県上松町の赤沢自然休養林にて初めての森林浴大会が行われたため、この地が「森林浴発祥の地」とされています。
森林浴は身近な場所で手軽に実践できるため、公園や森林などの緑の多い場所であれば何処でも、誰でもが簡単に始められる健康法の一つです。森林の中で清浄な空気を吸い込み、木々や緑の香りを感じることで心身の健康を促進し、自然とのふれあいを通じてストレスの軽減やリフレッシュ効果が期待できます。日本で発祥して40年以上経った今では様々な観点からの研究が行われており、世界各国で取り入れられている自然セラピーとなっています。
心身ともにリラックスできる
森林浴が心身のリラックスに効果をもたらす要因は、植物が放出する芳香成分フィトンチッド※によるものです。森の中はこのフィトンチッドで満ち溢れています。フィトンチッドは植物が外的な細菌やウイルスから身を守るために発散する揮発性物質で、植物が自己防衛のために微生物や害虫を忌避・死滅させるための殺菌作用を持ち合わせています。人体には無害どころか有益な効果が多く、抗菌・防虫・消臭効果や血圧を低下させたり、脳の活動を沈静化させるリラックス効果があります。
※フィトンチッドはロシア語で植物を意味する「フィトン」と殺菌を意味する「チッド」を組み合わせた言葉で、1930年代にロシアのトーキン博士によって命名されました。
ストレスホルモンの低下
森林浴にはストレスホルモンの抑制や自律神経のバランスを整える効果があり、交感神経の活動を抑えて副交感神経を活発にすることで、心身のリラックスを促進します。研究によると、森林浴を行うとコルチゾールなどのストレスホルモンが減少することが確認されており、ストレスが緩和されることによって自律神経が安定し、イライラや不安感を落ち着かせ、睡眠の質も向上します。
自律神経のバランスが整う
森林浴はリラックス時に働く副交感神経を活発にして、ストレス時に優位になる交感神経の活動の抑制に効果があります。副交感神経を優位にすることでリラックス効果が高まり、ストレスの軽減や精神の安定に繋がることが研究によって示されています。
免疫機能の向上
最近の研究によると、森林浴中に樹木から放出されるフィトンチッドを吸い込むことで、体内でウイルスに感染した細胞や一部のがん細胞を攻撃するNK細胞の活性が高まり、免疫力が向上することが分かっているそうです。科学的な証明が裏付けるように、森林浴は心身のリラックス効果を得るためだけではなく、病気にかかりにくい体を作るためにも有効な手段と言えます。
精神面の安定をはかる
うつ病の発症や進行において、最も大きな敵はストレスです。このストレスを軽減する方法として、森林浴は非常に効果的であり、自然の中で過ごすことで心身のリラックスを促し、ストレスを軽減させる効果が期待されています。そのため、森林浴はうつ病の予防や改善に役立ち、メンタルヘルスの維持・向上のためにも定期的に行うことが推奨されています。
デジタルデトックスとは、スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器から意識的に離れることで脳を休める取り組みのことを言います。
脳の疲労はデジタル機器からの情報に常にさらされることで、前頭前野の活動が過剰になることが原因とされています。前頭前野は「脳の司令塔」とも言われ、記憶や感情の制御、行動の抑制などの様々な精神活動を司る重要な脳の領域です。そのため、前頭前野に過剰な負荷がかかるとその機能が低下してしまい、思考力や判断力、集中力や記憶力が低下したり、さらには感情のコントロールの困難や意欲の低下といった症状が現れます。しかし森林浴を行い自然環境に身を置くと、この脳の過剰な働きを抑えることができるとされています。
研究によると、森林の音や風景、さらには樹木や草の香り(フィトンチッド、青葉アルコール、青葉アルデヒドなど)が脳に良い影響を与え、前頭前野の活動を鎮静化させることが示されているそうです。森林浴は脳の疲労を回復させ、心身ともに高いリラックス効果を得ることができるため、デジタルデトックスと共に行うことをおすすめします。
※デジタルデトックスについての詳細はニュースルームトピックス「脳疲労を防ぐ!在宅ワークの休息法~デジタルデトックスとは?~」をご参照ください。
森林浴を行うために、もちろん山に行くのも良いですが、身近な場所で自然豊かな公園や神社などでもリラックス効果を得ることができます。自然の風景をただ眺めるだけではなく、緑の中をウォーキングすることでその効果がより高まります。高いリラックス効果を求める場合はハイキングやトレッキング、森林内の散策をおすすめします。自然の中で体を動かし、五感をフル活用することで心身ともにリフレッシュし、深い癒しの効果も感じることができるでしょう。
森には予想以上の危険が潜んでいます。特に夏場はスズメバチやアブ、ブヨなど、都市ではあまり見かけない虫や動物がたくさんいます。そのため、森林などの自然に囲まれた場所へ行く際には必ず長袖長ズボンを着用して肌の露出を防ぎ、虫除けスプレー等を使用しましょう。また、人が少ない山道を歩く際には、クマとの遭遇リスクも考慮しなければいけません。
舗装されていない森林内では足を滑らせたり落石に遭う危険があるため、山や森のアクティビティに慣れていない方は整備されたハイキングコースや自然豊かな公園を選ぶことをおすすめします。森の危険に十分注意を払い、安全に楽しみましょう。
森林浴は必ずしも遠くの森や山に行く必要はなく、身近な自然でも効果が期待できます。都市部に住んでいると山林に行くことが難しいと思いますが、近所の公園や自宅の庭など、身近な場所で自然に触れることでも心身のリフレッシュが可能です。
また、ウッド系のアロマオイルを使うことでも、自宅にいながら森林浴の気分を楽しむことができます。樹木は香りを通じて虫や菌から自らを守るため、樹皮や葉から抽出された天然のアロマオイルは防虫や抗菌の効果、空気を清潔に保つ作用があります。ウッド系のアロマオイルにはヒノキ、シダーウッド、ジュニパーベリー、サイプレス、ティートゥリーなどがあります。
森林浴は緑に囲まれた中、自然の息吹を五感で感じることで心身の健康を回復させ、大きな癒しの効果を与えてくれます。自然の緑に触れることでストレスを軽減し、高いリラックス効果を得ることができるため、心の健康にも良い影響を与え、科学的にも高い健康効果があることが実証されています。
近年では、自然が持つ高い癒しの効果を得るためや心身のデトックス効果を求めて、多くの人々がアクティビティの一環として、自然豊かな山林や神社などで森林セラピーを楽しんでいるようです。
ストレス社会で必死に戦っている皆さま、たまには植物たちが浄化してくれた澄んだ空気に包まれて、心身をリセットさせてみませんか?わざわざ遠くへ出かけるなど気負う必要はなく、ただ緑に触れて、そのエネルギーを感じるだけでも十分な効果があるのです。心も身体もデバイスもオフにして、自然が持つ大きな癒しのパワーを全身で感じながら、疲れた心と身体のメンテナンスに、森林浴を楽しんでみてはいかかでしょうか😊🌳。