本記事では、視覚障がい、聴覚障がいのある方を雇用する際の配慮事項や、
障がいの特性などについて解説いたします。
視覚は、視力、視野、色覚、光覚の4つの要素に分けられます。
身体障害者福祉法では、視力と視野に一定以上の障がいがある場合を
視覚障がいとして定義していますが、見え方は人それぞれ異なります。
視覚障がい者の中には、視覚を全く活用できない「全盲」の人と、
光を感じる、ないしは何らかの保有視力がある「弱視」の人がいます。
弱視は最近ではロービジョンとも呼ばれています。
身体障害者手帳では、視力の等級が6級から1級まで分かれており、
1級が最も重度の視力障がいを持つ人々を指します。
それぞれの等級には、視力の基準が設けられており、視力の状態によって等級が決まります。
視覚障がい者が従事する職業には、
あんまマッサージ指圧師、医師・弁護士等の専門職、
義務教育や高等教育の教員、IT等のエンジニア、経理・人事等の事務職、
ビル清掃員、工場作業員、調理作業員などの事例があります。
配慮事項としては以下のようなことが挙げられます。
<安全面や疲労度を考慮した環境整備>
1.勤務時間の調整や休憩時間の確保を行う。
2.スイッチなどのボタンや手すりに点字シールを貼る
3.机の角にクッション材を貼る
4.整理整頓を心がけ安全性を確保する
5.部屋の入口近くに席を設ける
6.移動しやすいレイアウト設定などの配慮を行う等
<コミュニケーション>
1.呼びかける際は、相手の名前を呼び、自分の名前も言う。
2.席が近くの社員は、席を離れるときに一声かける。
3.物をさす場合は、「これ、それ、ここ、そこ」ではなく、
「右」「左」「前」など、具体的に伝える。
4.また、時計の文字盤を例にとって
「9時の位置に電卓があります」(クロックポジション)と伝えることも有効です。
<就労支援機器>
1.文字を拡大する拡大ルーペ
2.拡大読書器
3.スマートフォンやタブレット端末のカメラ機能
4.広範囲の視角を限られた視野に収めて見ることができるマイナスルーペ
5.文書を読む際の目の負担を軽減し、効率よく読めるタイポスコープ
6.パソコン上のテキストデータを音声で読み上げる画面読み上げソフト
聴覚障がいは、聴覚に障がいがあるために全く聞こえないか、
聞こえにくい状態を指します。そのため情報が不足しやすい側面があります。
また、見た目でわからない障がいであるため、
配慮が必要であるにも関わらず、気づいてもらえないという問題もあります。
・伝音性難聴
聞こえる音が小さくなる(補聴器の効果は大きい)
・感音性・混合性難聴
音がゆがむ(補聴器の効果は小さい)。
手話を日常のコミュニケーションにしている人々の大半は感音性・混合性難聴で、
ただ単に音量を大きくしただけでは言葉を聞き取れません。
音量を上げると、かえって苦痛になることがあるので注意が必要です。
・聴力レベル
聴力の程度はデシベル(dB)という単位で表されます。
日常会話は約60dB、電車がホームに入る音は約80dB、ジェット機のエンジン音は約120dBです。
聴力レベルの検査結果が両耳とも100dB以上であった場合、身体障害者手帳では2級に相当し、
言語機能障害の3級(音声言語による意思疎通の障がい)との重複障がいで1級に認定されています。
最も軽度の聴覚障がい6級の聴力レベルは、両耳とも70dB以上、
または、片方の耳が90dB以上で、かつもう片方の耳が50dB以上です。
特徴
聴覚障がい者には、日本語の読み書きが不得意だったり、
自分の発音を確認できず不明瞭な発声になる人がいます。
外見からは障がいが見えにくく、コミュニケーションについての理解が得にくいことがあります。
また、聴覚障がいは「情報障がい」としての側面があり、
音声から得られる情報が不足するため、常識や知識が欠如していると誤解され、
能力発揮や人間関係に影響を与えることがあります。
聴覚障がい者の中には、耳鳴りやめまいを感じたり、
小さい音と大きい音との中間層の大きさの音に過敏になっていたりする人がいます。
何でもない機械音が、仕事に支障を来すほどのストレスになっている場合があります。
コミュニケーションの方法を選ぶ前に、本人に確認することが大切です。
お互いに話そうとする気持ちを持って、話がしやすい雰囲気を作ることが重要です。
伝達事項を伝えた後は、理解できたかどうか確認しあいましょう。
コミュニケーションの方法における基本的な留意点は、以下のとおりです。
<手話>
・お互いに表情を見ながら手話表現を行うことが大切で、アイコンタクトも重要です。
・「手話が下手だから」と消極的にならずに、あいさつや身近なことなど
簡単な手話を使って表現するなど、伝えたい気持ちを表すことが大切です。
また、身振りや表情をつけたり、筆談を併用することも大切です。
※手話通訳者の派遣について
聴覚障がい者本人が関わっている手話通訳者について情報収集することや、
市町村の障害福祉所管課、全日本ろうあ連盟加盟団体などに問い合わせるとよいでしょう。
また、障害者介助等助成金(手話通訳・要約筆記等担当者の委嘱助成金)もあります。
<口話>
・聴覚障がい者の中には唇や口の動きを見て話の内容をある程度把握できる人がいます。
その際、相手の顔を真剣にジッと見るため、相手は失礼と感じる場合がありますが、
このことについては周囲の理解が必要です。
・口話では、同じような口の形は読み取りにくいので、
できるだけジェスチャーを加えると、聴覚障がい者の理解度が増します。
・口話で話す時は、相手と正面に向かい合い、自分の唇がまっすぐ見えるようにします。
<筆談>
1.読みやすい文字で書く。
2.長い文章は避け、短く区切る。
3.5W1Hなど内容のポイントをはっきり伝える。
4.比喩や曖昧な文字は避け、具体的で明確な表現方法を用いる。
5.ひらがなだけの文章ではなく、漢字を使用するほうが理解しやすい場合もある。
6.二重否定は避ける。
<その他>
・携帯端末のアプリで日本語の音声を文字に変換して読んでいる人もいます。
・始業・終業、休憩、警報などを知らせる場合は、
回転灯(パトランプ)など光(フラッシュライト)を利用した信号装置の設置が有効です。
・職場内で効率的にコミュニケーションを取ることや本人に災害などの緊急事態を知らせるために、
携帯用ホワイトボード、定型文が書いてあるメッセージボードなどを用意するとよいでしょう。
そのほか、電光LEDや液晶画面によって知らせる方法もあります。
障がいの程度や特性は人それぞれです。
ツールを使ったコミュニケーションを取ることも有用だということがわかりました。
それぞれの障がいに合わせた配慮を知り、互いに働きやすい職場環境を整えましょう。
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
https://www.jeed.go.jp/disability/data/handbook/q2k4vk000003kesx.html#1