
仕事に集中していると「気付いたらお昼休みを過ぎていた」「仕事の終了時刻を大幅に過ぎていた」ということはありませんか?
仕事に集中するのは良いことですが、集中しすぎたせいで疲れ切ってしまうのは困りますよね。
時間を忘れるほど何かに集中し、没頭してしまうことを「過集中」と言い、発達障害のある方に多く見られる特性のひとつでもあります。
作業中に過集中の状態に入ると、極めて高いパフォーマンスを発揮できる一方で、心身ともにかなりのエネルギーを消費するために疲労や健康面に影響し、日常生活や社会生活に支障をきたしてしまうこともあります。
今回の記事ではこの「過集中」について、障がいとの関連性やオーバーワークを防ぐための対策について解説してまいります。
過集中とは、その名の通り「過剰に集中しすぎる状態のこと」を指し、発達障害の方に多くみられますが、これは誰にでも似たような経験があるかもしれません。
過集中は短期間に非常に高い集中力を発揮して自分の興味のあることに没頭するため、仕事や創作活動において高い生産性を発揮し、優れた成果を上げることができるというメリットがあります。
一方で、過集中にはデメリットもあります。例えば時間の感覚が無くなって食事を忘れたり、睡眠時間がずれて生活リズムが崩れることがあります。
また、一つのことに集中していると、かなりのエネルギーを消耗してしまい、集中力が切れた際には急激な疲労感に襲われ、他の活動や仕事への切り替えが難しくなることもあります。
さらに過集中のあまり、他者から話しかけられても気付かないことがあり、このようにコミュニケーションを疎かにしてしまうような事態が続くと相手からは無視されている、思われてしまい、周囲との関係が悪化する可能性があります。
また、食事をとらないことは低血糖や栄養失調を引き起こす恐れがあり、睡眠不足は翌日の授業や仕事に支障をきたすことがあります。
過集中は特定の物事に強くのめり込む傾向があり、ゲームやギャンブル、SNSなどに依存してしまう危険性も高く、依存状態に陥ると日常生活においても社会生活の面でも影響が大きく支障をきたすため、十分な注意が必要です。
ASD(自閉スペクトラム症)は特定の物事に強い興味やこだわりがあり、自分で決めたルールを変えることが苦手、という特性があります。
一つのことに集中しやすく過集中になることがありますが、過集中自体はASDの特性ではなく、こだわりの結果として現れることがあり、ASDの方が必ず過集中になるというわけではありません。
また、ADHD(注意欠如多動症)は、興味がないことには集中できず、じっとしていることが苦手で衝動的に行動する、といった特性があります。
過集中は起きにくいと思われがちですが、実際には興味を持ったことに対しては過集中になることもあるそうです。特に不注意優勢型※の方は、集中し始めると切り替えが難しくなる傾向があり、ADHDの特性の一つに過集中があるというわけではなく、ASDの場合と同じく特性によって引き起こされることがあります。
※ADHDは不注意優勢型、多動・衝動性優勢型、混合型に分けられ、不注意優勢型は物忘れやケアレスミスが多く、集中力が欠如した「不注意」からくる症状を持つことが特性で、多動・衝動性優勢型は落ち着きがなく、じっとしていられずに衝動的な言動とるなど、感情や行動の制御ができない「多動・衝動性」からくる症状が特性です。そして不注意型、多動・衝動性型両方の症状を含め幅広い特性を持ち合わせているのが混合型となります。
1.適度なタイミングで休憩を入れること
集中しすぎて時間の感覚を失うことが多い場合は上司の了承を得て、仕事中に1時間~1時間半ごとに5~6分の休憩を取るとよいでしょう。
その際、音の鳴らないバイブレーション式のタイマーを使用したり、在宅ならアラームを設定する方法が効果的です。1時間~1時間半が経過したら、作業が途中でも必ず休憩を取りましょう。
2.事前に特性について理解を得ておくこと
過集中の状態について、周囲の人々に自分の特性を事前に説明しておくことも大切です。
周囲の理解を得られると誤解やトラブルを未然に防ぐことができるため、声をかけられて気づかない場合でも、特性を理解してもらっていれば「無視された」などと思われることが少なくなります。
また、長時間の集中作業中に休憩を促してもらうなど、周囲の協力を得ることもよいでしょう。
無理をせず、信頼できる方に相談することをおすすめします。
3.進捗を確認しながら進めること
過集中になると、通常よりも多くの作業を短時間でこなすことができ、進捗が予定よりも早くなることがよくありますので、このような時は改めて進捗を確認するとよいでしょう。
「予定より早く進んでいるから、ペースを落としても大丈夫だ」と感じることができると、精神的にも余裕が持てるようになります。心に余裕を持ちながら作業を進められるようになると、過集中を避けることもできるでしょう。
4.作業の合間に水分補給やストレッチを取り入れること
過集中は水分不足を引き起こす可能性があるため、作業の合間の水分補給を意識することが重要です。
また、筋肉のこわばりを防ぐために、簡単なストレッチや柔軟を行うとよいでしょう。
パソコン作業を1時間〜1時間半続けた後は、たとえ作業が途中でも意識的に手を止め、体をほぐすことが大切です。
さらに、パソコンから離れて目を休めることも効果的ですし、定期的にトイレに行くことも気分転換に役立ちます。意識的に身体をいたわってあげることが大切です。
過集中は特定の物事に対し過剰なまでに集中してしまう状態のことを指し、高い集中力を発揮する一方で、長時間続くと日常生活や社会生活に支障をきたす可能性があります。
ですが、このような困り事があっても、適切な対処法を用いることで過度な集中状態を避けてオーバーワークにならずに疲労を軽減し、意識的な管理によって過集中のメリットをご自身の強みに変えていくこともできるようになります。
周囲の適切なサポートを受けながら、集中力を活かした高いパフォーマンス力をより良い方向へ向上させることができるように、実践しやすい対策方法を模索していきましょう。