
猛暑日が続くと「食欲がわかない」「体がだるい」などの不調を感じることはありませんか?
日本の夏の特徴である高温多湿な環境下において、連日のように続く厳しい暑さは体にとって非常に大きなストレスとなります。屋外では身の危険を感じるほど年々暑さが過酷になっており、災害レベルともいわれる猛暑がさまざまな健康被害をもたらすため、この時期に体調不良を訴える方が非常に多くなってきています。
今回は夏の暑さがもたらす体調不良「夏バテ」について、予防や対策方法と共に解説いたします。
夏バテは、高温多湿の環境に対応できずに自律神経が乱れることから起こる体の不調の総称で、医学用語ではありません。「食欲がない」「体がだるい」「疲れやすい」「頭痛がする」など、実に様々な症状が現れます。
私たちの体は自律神経によって暑さを感じると汗をかいて熱を放出し、体温を調整していますが、高温多湿の環境下では汗の蒸発が遅くなるために体温調整が上手く機能しなくなってしまいます。さらに、エアコンの効いた室内と外の蒸し暑さとの激しい温度差の中を行き来したり、熱帯夜が続いて睡眠不足となり自律神経の働きが乱れてしまうと、それが夏バテにつながって様々な体調不良を引き起こしてしまいます。
本来、自律神経は昼間に交感神経が優位になり、夜は副交感神経が優位に切り替わります。しかし、精神的なストレスや過労、睡眠不足、偏った食生活など、不規則な生活が続くと自律神経のバランスが乱れ、心身にさまざまな不調が現れます。
自律神経はこの「変化」にとても敏感で、些細な変化でも影響を受けやすく、バランスが崩れてしまうそうです。特に夏は外気温と室内温度との差、熱帯夜による睡眠不足や猛烈な暑さからくる食欲の低下などが体に大きな影響を与えます。すると自律神経が乱れ、夏バテや夏の疲れとなって現れてしまいます。
だるさと疲労感
夏バテの主な症状は全身のだるさと疲労感です。これが続くと体が重く感じ、疲れが取れにくくなります。また暑さによる睡眠不足も、だるさや疲労感を増幅し、疲労回復を妨げる要因になります。
めまい、立ちくらみ、頭痛
夏バテによって頭痛やめまい、立ちくらみといった症状が現れることがあり、これらは熱中症の症状の一つでもあります。夏バテによる頭痛は、暑さによる脱水や冷房使用時の急激な温度差からくる冷え、目の網膜や脳を刺激する強い直射日光など、実に様々な原因で起こります。めまいや立ちくらみは大量の発汗によって脳への血流が一時的に減少することが原因だそうです。
食欲不振
自律神経の不調は、食欲や胃腸の働きを低下させることがあります。食欲不振になると体に必要なエネルギーやビタミンが不足して体力も落ち、結果としてだるさや疲労感がさらに増してしまいます。
脱水
夏バテや夏の疲労感の主な原因は脱水によるものです。汗をかく量が増える一方で、十分な水分補給ができていないと体内の水分量が不足し、脱水症のリスクが高まります。特に夏バテによって食欲が落ちると、食事からの水分摂取量も減少してしまうため、脱水症状を引き起こすことがあります。
睡眠不足
熱帯夜が続いて睡眠不足になると、疲労回復がしにくい状態になってしまい、また夜中に何度も目が覚めることで、眠りが浅くなって血流が悪化し、自律神経のバランスが乱れます。血流の低下は全身に影響を及ぼし、やる気の低下やだるさといった夏バテの症状を引き起こすことがあります。
屋内外の気温差
屋外と室内の大きな温度差は自律神経の働きを乱してしまいます。特に温度差・寒暖差が7℃以上になると「寒暖差疲労」を引き起こす可能性があり、体温調節を行う自律神経が過剰に働いてしまうため、体が疲労を感じるようになってしまいます。体温調整のためには衣服を上手に活用し、こまめに温度管理を行って急激な温度変化に対応できるように心がけましょう。
運動不足
運動は体力の向上だけでなく、自律神経のバランスを整え、睡眠の質にも大きく影響します。そのため、運動不足になると自律神経が乱れて睡眠の質が低下し、睡眠時の疲労回復にも影響して疲れやすくなり、夏バテの原因となることがあります。暑い時期でも、室内でできるものや比較的涼しい時間帯を利用して、無理のない範囲での定期的な運動も大切です。
消化機能の低下
冷たい飲食の過剰摂取は胃腸の動きを鈍くさせ、食欲低下や消化不良を招くだけでなく、胃腸の冷えは自律神経のバランスも崩してしまいます。自律神経と腸は密接につながっていて、副交感神経の働きが低下すると消化や排泄の機能が影響を受け、食欲の低下や便秘、下痢、慢性疲労といった症状が現れます。夏バテによる食欲減少は、自律神経の影響で腸の働きが低下することが主な要因となることがあるそうです。
シャワーだけの入浴スタイル
夏の入浴はシャワーだけで済ませる方が多いと思いますが、これが自律神経を乱す原因になることがあります。自律神経を整えるためには、夏でも39〜40度のお風呂に15分間ぐらい浸かることが理想的です。そうすることで副交感神経が優位になってリラックス効果が得られ、夏場の疲労回復にも効果的です。しかし、湯船に浸かることが難しい場合でもシャワーで仙骨の辺り(腰の中央、背骨のいちばん下にある骨)に熱めのお湯をかけることで、湯船に浸かった時と同様の効果を得ることができます。
自律神経の総合的な力の低下が夏バテを引き起こします。夏バテの回復には、普段以上に自律神経のバランスを整えることに注意が必要です。
冷房で体を冷やしすぎないこと
室内外の温度差が5℃以上になると、自律神経が乱れやすくなります。特に急激な温度変化が1日に何度もあると、体温調節のために自立神経が過剰に働いてしまうため、それが疲労の原因になります。冷房を使用する際は、外気との温度差を極端に大きくしないように調整しましょう。また、冷房の風が直接当たると体が冷えすぎるため、羽織るものを用意するか、風向きを調整して快適に過ごしましょう。
適度な運動をすること
夏は暑さから活動量や食欲が低下しやすく、体力が落ちることがあります。そのため、適度な運動を行って体力を維持することが重要です。
夏バテは交感神経が過剰に働いている状態になるため、自律神経のバランスを整えるには副交感神経の働きを助けるウォーキングなどの有酸素運動が効果的です。暑さに対抗するためには、涼しい時間帯や室内で体を動かして汗をかく練習をすることもよいでしょう。しかし、体調が悪いと感じた際には無理をせず、しっかりと休養を取ることも大切です。
生活リズムを整えよう
朝に太陽の光を浴びることで体内時計はリセットされ、夜になると自然と眠くなるホルモンが分泌されるようになり、そうすることで自律神経のバランスが整います。さらに、朝食をとることも重要で、朝に食事をとると腸が活動しだすため、その後の副交感神経の働きがスムーズになります。また、一定の起床時間を保つことで、就寝時間も自然に整いやすくなります。夜はできるだけ12時までに就寝しましょう。
栄養バランスの良い食事を心がけよう
夏は冷たい麺類やアイスクリームを食べる機会が増え、炭水化物の摂取が増加する傾向にあります。
炭水化物はエネルギー源として必要ですが、体の正常な働きを維持するためには、他の栄養素もバランスよくとる必要があります。
食事の際には、たんぱく質(肉類、魚介類、卵、大豆製品、乳製品など)やビタミン類を意識して摂取しましょう。特に、ビタミンB1(豚肉、うなぎ、玄米、ごま)やB2(さばやいわしなどの青魚、レバー、牛乳、卵)は疲労回復にも効果的なので、積極的に取り入れましょう。
スパイスや香辛料は食欲を増進させる効果が期待できるため、カレーやエスニック料理を取り入れるのもよいでしょう。
さらに腸内環境を整えるためには、善玉菌の多い発酵食品(ヨーグルトや納豆、みそ、ぬか漬けやキムチ)を積極的にとりましょう。また、善玉菌のエサである食物繊維(オクラやなめこ、バナナ、ごぼう、さつまいも、豆類、玄米)をとることも大切です。腸の免疫力を高めることで夏バテに負けない体作りができます。
質の良い睡眠をとろう
自律神経の働きを整えるためには、十分な睡眠をとることが重要です。睡眠不足は交感神経の活動を活発にし、自律神経のバランスを乱す原因となります。
また、眠りにつきやすい、快適な睡眠環境を整えることも大切です。夏用の寝具を使用し、扇風機やサーキュレーターで空気の流れを作ると良いでしょう。ただし、体に直接風を当てると冷えすぎや脱水のリスクがあるため注意しましょう。
もし夜間に十分な睡眠が取れなかった場合は、15分程度の短い昼寝が疲労回復に効果的です。
夏バテの予防にはバランスの良い食事、冷房の使い方を見直すことや適度な運動や睡眠など、生活習慣を整えて、自律神経のバランスを保つことが大切です。自律神経は自分で直接コントロールすることはできませんが、整えるための働きかけをご自身ですることは可能です。
たとえば朝起きてコップ1杯の水を飲むことや深呼吸をして呼吸を整えることなど、とても簡単なことでも効果があるのです。自律神経が大きく乱れる夏の時期には、整えるためのちょっとしたコツを日常生活に取り入れて、セルフケアをしながら自律神経のバランスを整えていきましょう。