就業者インタビュー M.Mさん
在宅就業で良かったこと、難しかったこと
在宅就業で良かったことは、私は強迫性障がいで「外に出る」ことに大きな障がいを抱えていたので、「働くこと=外に出ること」という概念を取っ払ってもらえたことです。
外に出られなくても、仕事をする能力を持っている障がい者はたくさんいると思います。
外に出ることに障害があっても、在宅で仕事が出来れば、お金を手にすることが出来ます。
そのお金で必要な治療を受けたり、カウンセリングを受けたりすることが出来たおかげで、外に出るという大きな障害も少しずつ克服できるようになりました。
私は「週5日、デイケアに通えるようになったら働けますよ」と言われていましたが、週1日の午前中で限界でした。。。外のトイレが怖くて使えなかったからです。
今の私でも週5日のデイケアには通えませんが、それでも3年間フルタイムで在宅勤務ができました。
福祉職の方々の「外に出られないならダメ」という思い込みを、外してもらえる一つのケースになれたのではないかと思います。
難しかったことは、会社の一員としての所属感を持つことや、人とのつながりを感じることです。
私は会社に認識されているのか、私の仕事は認知されているのか、本当に社会の一員として社会参加できているのか、実感することが難しかったです。
障がい者雇用は「こういう人も存在する」ということを、健常者の人が感じ取りながら、共に働くことで相互理解を深める側面もあるかと思います。
在宅勤務という新しいシステムの中で、シンビーオと企業の人事の方々が、私たちと関わるための工夫を凝らしてくださったことに感謝しています。
転職についての経緯
私はずっと精神保健福祉分野で働きたくて、大学もその分野を選びました。
新卒時も大学病院の精神科デイケアで働いていました。
自分が精神障がいになって10年以上経ちますが、
「未だに福祉業界って障がい者雇用が全然ない!」
「ピアスタッフで自立生活を送れる求人もほとんどない!」
ということを常日頃から思っていました。
さらに「福祉って事業所に行かないといけないことが多くて、
働いていると平日の9時から17時までに行くなんて無理!」と実感する中で、
「オンラインでピアサポートをするボランティアをしよう!」
と思い立ち、精神保健福祉士の資格試験を受けました。
私は仕事に全力を出して、退勤後は脱力するタイプなので、平日は動画で勉強して、休日に教科書で勉強、あとは学生時代に定着させた知識に下支えされる形で合格しました。
自分でボランティアをするにも、ピアサポートのサポートをしてくれる事業所さんが見つからず、
自分で小さくコツコツと活動している中で、精神保健福祉に関する考え方の方向性が近く、
在宅ワークの日もある求人を見つけたので、これは運命だと思ってチャレンジすることに決めました。
※ピアサポートとは...精神保健福祉の分野において、精神疾患や障がいを抱える方、または同じようなご経験のある方が、当事者としての経験を活かし、同じような境遇の方々の社会参加や個々の問題解決に向けての相談や支援を行う活動を指します。「ピア(peer)」とは「仲間」という意味を持ち、ピアスタッフとはケアや治療を行う専門家とは違った立ち位置で、利用者・対象者に同じ境遇の仲間としてより深く寄り添い、そして互いを支え合いながらリカバリーを目指す、という大変大きな役割を果たすお仕事です。
在宅勤務のキャリアアップについて思うこと
「障がい者のキャリアアップ」って、結構難しい問題ですよね。
そして何をもって「キャリアアップ」とするのかも、健常者の方より複雑だと思います。
例えば、障がい者でフルタイム勤務をしていても、手取り収入のみで一人暮らしを成立させられる人は、全体の何パーセントくらいなのでしょうか。
障がいの種別でもかなりの差があると思います。
同じ職場で働いていて、業務量に差があったとしても、時間給制であれば、
いくら頑張っても、お給料は上がりません。
精神障がいを持つ私にとってのキャリアアップは、
「健康を損なわない環境を守れること」
「意味があると思える業務が出来る仕事に就けること」
「努力を評価してもらえること」
「手取り収入のみで一人暮らしができること」、などが思い浮かびます。
「キャリアアップ」というと、社会の枠組みも含めた難しい問題だと感じます。
簡単にはいかない道ですが、障がいがあっても自分の人生を選択できるというのは当たり前ではなく、先人が切り開いてくれた道のおかげだと思っています。
私は自分のことを「キャリアアップ」なのか「キャリアチェンジ」なのか、あまりよく分かっていませんが、希望職種に転職できたのは、自分が特別な障がい者だからではなく、行動と運がたまたま繋がったのだと思っています。
これから在宅就業する方へ向けてのアドバイス
自分の出来ることを増やしていく感覚で仕事をすると、未来に繋がっている感じがして前向きな気持ちで業務に取り組めると思います。
例えばリスト作成であっても、ただリスト作成をしていると思うのではなく、業務を効率化するための関数を調べてみたり、タイピングの正確性と速度を上げたりすることも意識してみるなど、自分のためになる理由を作ると働きやすいと思います。
また、モチベーションが下がる時もあると思いますが、業務のその先にいる人のことを想像すると、この業務も何かの役に立つと思えるはずです。
業務の誠実さは信頼につながると思っていて、信頼を得られる仕事が出来ると、直接的でなかったとしても、自分の未来にとってプラスになると思います。
3年間在宅勤務でずっと一人暮らしなので、自立しているのか孤立しているのか、
分からなくなる日もありました。
気兼ねなく仕事の話が出来る環境がないので、不安定になる時期もありましたが、
自分のための時間を作って、自分の感じる「楽しい」や「嬉しい」を探すうちに、ストレス発散のスキルも磨かれたように思います。
シンビーオの職員さんも、私の住まいの問題など業務外のことでも親身になってくださり、本当に感謝しています!