【介護サービスが必要になったら】介護の基礎知識(16)~介護保険外サービスとは?種類やサービス内容について~

はじめに
介護保険サービスは介護保険法に基づく一定の厳しい基準があるため、サービスの種類や利用条件に制限があります。
そのため、介護保険内では提供できない様々なサービスを補うために、そして多様化した介護環境のニーズに応えられるように「介護保険外サービス」というものが設けられています。
このサービスは要介護認定を受けている方だけでなく、受けていない方も是非を問わずに利用できることが特徴です。
介護保険外サービスは介護保険を利用できないため、費用は全額自費となりますが、介護保険の適用外でも受けられるサービスは数多く、利用者の日常生活をより豊かな生活にすることができます。
本記事では介護保険外サービスの種類や内容、メリット・デメリットなどについて解説いたします。
介護保険外サービスとは?
介護保険外サービスは介護保険では提供できない部分を補うためのサービスであり、費用は全額自己負担になります。
介護保険内では生活援助や身体援助などのサービスに限られていますが、介護保険外サービスでは家事代行や外出支援、ペットのお世話など、利用者の多様なニーズに応じたサービスを受けることができます。
介護保険サービスとの違いとは?
介護保険サービスは65歳以上の高齢者や特定疾患を持つ40〜64歳の患者が利用できる制度で、介護保険サービスを利用するためには要介護認定を受ける必要があります。
一方、介護保険外サービスは介護認定の有無にかかわらず、すべての高齢者が利用できます。
特に介護認定を受けていない元気な高齢者には介護保険サービスは適用されないため、介護保険外サービスがその役割を補います。
介護保険で提供できないサービス(保険外サービス)
介護保険制度では提供できないサービスの一例を以下に挙げてみました。
- ・散歩や趣味のための外出介助
- ・金銭の管理や契約書の記入などの手伝い
- ・同居家族の洗濯や掃除、料理といった家事援助
- ・訪問理美容
- ・大掃除、家屋の修理や家具の移動
- ・草むしりや花木の水やり
- ・犬の散歩などペットの世話
- ・車の洗車や清掃
- ・お酒やたばこ等、嗜好品の買い物
掃除、洗濯、買い物、薬の受け取りなどの生活援助は介護保険で利用できるサービスですが、同居家族がいる場合は原則として利用できません。
厚生労働省のガイドラインによると、同居家族がいる場合は「介護保険外サービス」を利用することが一般的ですが、家族に特別な事情がある場合には介護保険サービスでの「生活援助」が認められることもあります。
介護保険外サービスの内容
介護保険外サービスの特徴は、介護保険制度の制約を受けずに多様なサービスが選べることです。
趣味活動など、生活の質(QOL)を向上させるための支援を受けることができます。
介護保険外サービスを提供する組織は市町村や民間企業など幅広く、組織の例は以下の通りです。
1.市区町村(自治体)
2.社会福祉協議会
3.介護事業所
4.民間企業
運営する組織によってサービスの利用方法や費用は大きく異なるため、利用者は自分に好みや生活スタイルに合ったサービスを賢く選びましょう。
1.市区町村による介護保険外サービス
全国の各市区町村では介護保険外の在宅サービスを独自に提供しています。
サービス内容は市区町村ごとに異なるため、種類や料金、利用条件もさまざまです。
サービスを利用したい場合は直接市区町村に問い合わせるか、地域包括支援センターに相談しましょう。また、各市区町村のホームページでも詳細な情報を得ることができます。
以下は目安です。

2.社会福祉協議会の高齢者支援サービス、シルバー人材センターの家事・福祉支援サービス
全国の市区町村に設置されている社会福祉協議会やシルバー人材センターでは有償ボランティア事業を実施しており、こちらでは介護保険の認定に関係なく利用できる介護サービスを提供していますが、地域によって利用条件やサービス内容が異なることがあります。
具体的なサービス内容や費用の目安については、各地域の社会福祉協議会やシルバー人材センターにお問い合わせください。

3.介護サービス事業者による介護保険外サービス
多くの介護サービス事業者は介護保険サービスを主な事業として提供していますが、介護保険外のサービスを展開している事業者もあり、介護認定を受けていない高齢者も利用可能です。
介護保険サービスは自己負担が1割~3割ですが、介護保険外サービスは全額自己負担となります。
介護認定を受けていない場合は、サービスを提供している介護サービス事業者に直接問い合わせるか、地域包括支援センターに相談しましょう。
介護サービス事業者の主な介護保険外サービスと費用は以下の通りです。

4.民間企業の介護サービスや高齢者支援サービス
民間企業が提供するサービスは市区町村のサービスに比べて費用が高くなりますが、その分サービス内容が豊富で、特に介護保険サービスや市区町村のサービスにはない独自のサービスを提供しています。
また、緊急時にも利用しやすいというメリットもあります。

介護保険外サービスのメリットとデメリット
介護保険外のサービスを利用する際には要介護認定を受ける必要がなく、基本的には利用対象者に制限は設けられていないので、誰でも利用できるというメリットがあります。
ただし、介護保険が適用されないため、利用料金は全額自己負担となります。このため、介護保険サービスと比べて料金が高くなることが多い点には注意が必要です。
介護保険外サービスのメリット
1.サービス提供時間の縛りがない
介護保険外サービスはサービスの提供時間を柔軟に設定できるため、利用者のニーズに応じた対応が可能となっており、介護保険内のサービスには時間制限がありますが、保険外のサービスを利用することで必要な時間分のサービスを受けることができます。
また、介護保険サービスを利用した後に介護保険外のサービスに切り替えることもできるため、より充実した介護を受けることができます。
2.高齢者の家族を対象としたサービスがある
介護保険外サービスは介護保険の対象者だけでなく、同居する家族もサポートできる点が特徴です。
例えば、高齢の夫婦がいる場合、夫が介護保険の対象者であれば夫の介護は行えますが、妻の生活支援はできません。しかし、介護保険外サービスを利用すれば妻もサポートを受けることができ、例えば洗濯や調理、買い物、布団干しなどの生活支援を受けることが可能になります。
3.自由なサービスを選択できる
介護保険外のサービスを提供する事業者は介護保険サービスにはない独自のサービスを展開しており、介護保険制度ではサービス内容によって特定の対象者しか利用できない制約がありますが、介護保険外のサービスでは料金を支払うことで誰でも利用が可能です。
利用者は自由にサービスを選ぶことができ、提供者側もニーズに応じたサービスを提供してくれます。
介護保険外サービスのデメリット
1.金銭的負担が大きい
介護保険対象のサービスを利用する場合、自己負担額は通常費用の1割ですが、収入によっては2~3割になることもあります。
一方、介護保険対象外のサービスを利用する際は、全額を自己負担しなければなりません。便利だからといってサービスを過剰に利用すると予算を超えてしまい、家計を圧迫する可能性があります。
介護保険対象外のサービスを利用する前には、ケアマネジャーに相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
2.不必要なサービスが提供される可能性も
介護保険対象外のサービスは料金や内容が自由に設定できるため、必要のない高額なサービスを押し付けられるような場合があります。
高齢の方は強く出られない場面や密室での雰囲気から断りにくくなることもあるため、保険外サービスを利用する際には、信頼できる業者かどうかを事前に確認することが重要です。
また、介護保険外サービスを利用する際は予算を考慮しながら必要なサービスを厳選し、サービス内容や口コミなどの情報をしっかり確認して、適切なサービスを選択をしましょう。
おわりに
介護保険外サービスは介護保険を利用したサービスでは対応できないニーズを満たすという重要な役割を果たし、今後は少子高齢化で労働人口が減少することにより、介護保険外のサービスの需要は大きく増加すると思われます。
介護保険サービスと介護保険外サービスを上手に組み合わせて利用することで、要介護者やその家族の負担を軽減し、介護保険対象のサービスだけではカバーしきれない部分を補うことで、生活の質を向上させることが期待できます。
ただし、保険外のサービスは金銭面での負担が大きいため、利用は予算を考えながら計画的に利用しましょう。
トピックス【介護サービスが必要になったら】記事のご案内
過去の記事をまとめてございます。よろしければご参照ください。
参考リンク
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001236607.pdf
みんなの介護
https://www.minnanokaigo.com/news/kaigo-text/home-care/no334